大爆死から一転、再評価された日本映画は? 公開当時大コケした邦画の名作5選。逆転勝利をもぎった作品をセレクト
人々の心に残り続ける名作映画が、必ずしも評価されていたというわけではないことをご存じだろうか。今では名を知らぬ者はいない世界の巨匠・北野武や宮崎駿も、公開時に大コケしてしまった過去を持つ…。それも意外な作品でだ。そこで今回は、公開時は大コケしたものの後に絶賛された日本映画を5本セレクトして紹介する。(文・寺島武志)
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日本アニメ史に残る不朽の名作も公開当時は不発に終わる
『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)
上映時間:100分
監督:宮崎駿
原作:モンキー・パンチ
脚本:宮崎駿、山崎晴哉
キャスト(声優):山田康雄、小林清志、増山江威子、井上真樹夫、納谷悟朗、島本須美、石田太郎、宮内幸平、永井一郎、山岡葉子
【作品内容】
大泥棒ルパン三世は、仲間の次元大介・石川五ェ門と共に偽札の出処と疑われているカリオストロ公国を訪れる。
入国した途端、悪漢に追われる1人の少女・クラリスと遭遇し。救出するものの、彼女はルパンに生家に代々伝わる指輪を残して、再び連れ去られてしまう。
カリオストロ公国の大公家のひとり娘であるクラリスは、強引に結婚を迫るカリオストロ伯爵によって城に幽閉される。ルパンは、その城に潜入することを決意するのだったが…。
【注目ポイント】
双葉社のマンガ雑誌「漫画アクション」の創刊号から連載が始まったのが、57年前の1967年。その後、アニメやビデオ、ゲームなどの各メディアで展開されるなど、『ルパン三世』は、子どものみならず、大人も楽しめるマンガシリーズだ。主人公は、フランスの小説『アルセーヌ・ルパン』の主人公の孫という設定である。
当然ながら映画化もされ、2024年4月時点でアニメ版10作、実写版2作が公開されている。本作はアニメ版2作目にあたる。
監督と脚本を務めたのは、後に数々の名作アニメを世に放ち、ついにはオスカーを手にする宮崎駿だ。本作は宮崎の映画初監督作品でもある。いまや日本を代表するコンテンツである宮崎アニメの原点はここから始まったのだ。
幾度にもわたってテレビで放送されているため、ピンとこないかも知れないが、上映当時は動員に苦しみ、興行収入は6億1000万円。興行収入約9億円を達成した前作『ルパンVS複製人間』よりも大きく数字を落とすことになった。これには、前作のヒットからわずか1年後の公開だったことも理由として考えられる。
しかしながら、興収の面では成功とは呼べないものの、ファンや評論家からは高く評価され、公開から40年以上の歳月がたった現在から振り返れば、未だに続編が製作されているルパンシリーズの中でもダントツの人気作となっている。それは本作が、1980年からテレビで頻繁に放送されていることからも明らかだろう。
2014年には、5.1chサラウンドにも対応させたデジタルリマスター版が公開。2017年には体感型上映システム「MX4D」に対応したMX4D版が公開され、さらに2019年には「MX4D」「4DX」の2タイプの体感上映システムに対応した4D版が公開。2021年には「ルパン三世」アニメ化50周年を記念して4K映像+7.1chサラウンドの特別仕様で公開されるなど、ルパンシリーズの中でも特別な一作として扱われている。
宮崎駿が再びアカデミー賞を受賞したことによって、本作の評価もさらなる高まりをみせるのではないだろうか。