爽快なエンディング…食欲を刺激する極上のスイーツ映画『パリ・ブレスト ~夢をかなえたスイーツ~』徹底考察&評価
text by 寺島武志
過酷な家庭環境で育ち、22歳でパティスリーの世界選手権のチャンピオンに輝いた天才パティシエ、ヤジッド・イシェムラエンの自伝に基づいた映画『パリ・ブレスト ~夢をかなえたスイーツ~』が公開中だ。本作の魅力を徹底的に紐解くレビューをお届けする。(文・寺島武志)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
不遇な少年の唯一の生きがい。天才パティシエの自伝ストーリー
イシェムラエンは、世界各地の最高級ホテルのコンサルタントや高級ブランドとのコラボレーションを手がけ、南フランスの歴史ある街・アヴィニョンや、パリにも自身の店舗を持つ、世界でも指折りの人気パティシエだ。
14歳でパリのデザート職人の見習いになると、著名なパティシエの下で修行を重ね、モナコのホテル「ル・メトロポール」でスーシェフ(副料理長)に。そして2014年、「ジェラート世界選手権(Gelato World Cup)」のチャンピオンに輝いた。
本作の主人公は、育児放棄の母親の下、過酷な環境で暮らす少年ヤジッド(少年時代=マーウェン・アムスケール、青年期=リアド・ベライシュ)。彼にとって唯一の楽しみは、里親の家で食べる手作りのデザートだった。
いつしか自分がパティシエになることを夢みるようになるが、児童養護施設育ちのヤジッドは、10代にしてパリの高級レストランに半ば潜り込むような形で見習いとして雇ってもらう。しかし修業の日々を過ごす中、シェフに気に入られたヤジッドを妬む同僚の策略で警察に拘留されクビになってしまう。