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映画『インフィニティ・プール』公開初日にブランドン・クローネンバーグ監督がオンラインで登場

text by 編集部

デヴィッド・クローネンバーグを父に持ち、自身も独特の世界観に溢れた秀作を送り出し、カルト的な人気を誇る鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督の最新作『インフィニティ・プール』が4月5日(金)より絶賛公開中だ。この度、本作の公開を記念し、ブランドン・クローネンバーグ監督のオンラインQ&A付きの上映が開催された。

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封切り初日の夜、満席の場内でスクリーン上に登場したブランドン・クローネンバーグ監督は「日本の皆さん、本日はお越しくださりありがとうございます。日本の皆さんに早く観ていただきたいとずっと思っていました。皆さんとお話しできるのをとてもわくわくしています」と挨拶。

MCを務めた映画ライターのSYOから、「ジェームズは小説家という設定です。そして、本作も元々はあなたが短編小説として物語を書いたことからスタートしているのですよね。僕自身も文章を書く仕事をしているので、劇中でジェームズが“あなたの作品なんて誰も読んでないよ”と言われていて、耐えられなくて落ち込みました(笑)。なぜ小説家の設定にしたのですか?」と質問されると、クロ—ネンバーグ監督は「これは物書きにしか分からないジョークのようなものだと思います。正直に言うと、僕の映画の1作目から2作目までには、8年間もかかっているんです。この間に、本作の脚本を書きました。ジェームズは僕自身ではないですが、1作目『アンチヴァイラル』を世に送り出すことができて以降、当時はなかなか次作が出せない状況になっていました。この気持ちをキャラクターに盛り込んだのです。ですから、SYOさんがジェームズの気持ちが分かると言ってくださってとてもうれしいです」と回答した。

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次に質問が客席の方に移ると、来場者からは熱気を孕んだ濃い質問が次々にクロ—ネンバーグ監督に寄せられた。まず、「ジェームズは自分がクローンにされるシーンで、口を無理やり開けられます。『アンチヴァイラル』でも主人公が口を通気口にさせられていましたが、監督は口にフェティシズムを感じているのですか?ボディパーツを変容されてしまうことで、主導権をコントロールされるような意味がありますか?」という質問に、クロ—ネンバーグ監督は「すべてはフェチと言えると思います。映画は奇抜なアートです。僕が“口を開くことを強いられる”という状況に特にフェティシズムを持っているわけではありませんが、僕はセクシュアリティの変容というものに魅了されていて、それを掘り下げたいと思っているのです」と答えた。

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また、「本作では主人公を自身の手や他人を介して殺していきます。それは、マゾヒズムというよりは、自己へのキュートアグレッション(可愛いものを虐めたくなる衝動)だったりするのでしょうか?」と問われると、「皆さんがアレクサンダー(・スカルスガルド)を可愛いと思うかによるかもしれませんね(笑)それは別にして、自分が処刑されるというシーンには2つの見方ができると思います。ジェームズは“こう見られたい”という理想像と、現実の自分の両方を持っています。そして、暴力が自分の内側に向かった時、彼は理想の自分を選び、現実の自分を殺すのです。もうひとつは、死生観を感じさせることだと思います。それは知的な話ではなく、自分を殺すということにマジカルな、五臓六腑で感じるような感覚的なことがキャラクターに起こると思うのです」。

映画『インフィニティ・プール』
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続いて、「前作もそうですが、あなたの作品は自分と他者が他の人の人生をめちゃくちゃにすることの罪悪感と、それに慣れて薄れていく、ある種の万能感を持ってしまうことを描いていると思います。そういった作風に至ったきっかけはありますか?」という質問には、「人間の脳はすごくプラスチックなものだと思いますが、様々な形で解釈できるので、人間の本質や振る舞いはただ一つだと言いたくはないんですね。ただ、暴力に関して言えば、人類史には常に暴力が絡んでいて、我々は獣です。そこにはサディスティックなものがあります。僕が興味を持っているのは、表向きの礼節が崩れ落ちたときに、暴力がどう発現するのか、ふるまいがどうなっていくのか。人間の行動が動物的なふるまいに戻っていくということに興味があります」と返答した。

そして、「登場人物たちは、自分がクローンなのかオリジナルなのかをずっと考えています。それが彼らの行動に影響を及ぼしたのでしょうか?」という質問に対し、「自分がクローンかオリジナルか、彼ら自身が知ることは不可能ですね。ですが映画の観点でいえば、どちらでもいいといえる作品になっていると思います。よくあるクローンの物語にはしたくなく、クローンはあくまでストーリーを語る上でのひとつのツールです。描きたかった題材は、アイデンティティと人間の本質です。西洋の哲学者はずいぶん前から、人間が人間であることについて研究してきました。継続する時間の中で、人間であり続けるということとは?行きつくところは、何もないと思います。社会的、個人的なアイデンティティは集約的な、私たちが分かち合っている物語の要素でしかありません。それが人間を人間たらしめている核ではないと思います。ジョークではないですが、自分が誰であるかということは、ポイントではないのだということを描いています」。

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「お面がすごく怖くて、最初のシーンでぎょっとしました。人の顔が崩れたようになっているのは意味がありますか?」と聞かれると、「仮面の顔が崩れていること自体には意味はありません。カーニバルや東欧のお祭りで、人は仮面をつけることで、2つ目のアイデンティティを得て、普段はできないことができてしまいます。本作の仮面はシンボリズムとして使ったのではなく、こういった伝統にのっとっています。特殊なリ・トルカ島ならではの文化と伝統的な文化を表したいと思い、デザインはリチャード・ラーフォーストにお願いしました。彼はコンセプトアーティストで、映画作家で、漫画アーティストでもあります。映画『武器人間』の監督として知られていますね。最初から、彼は本作の視覚的なイメージの中心人物になると感じていましたし、本当に素晴らしいデザインをしてくれました」と答えた。

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劇中に登場する仮面をモチーフにした初日プレゼントをつけた観客たちとクロ—ネンバーグ監督は笑顔で記念撮影し、イベントの最後にSYOから次回作について聞かれたクロ—ネンバーグ監督は「詳しくは言えませんが、2つの企画が動いています。ひとつはスペースホラーです。『イベント・ホライズン』とゲームの「あつまれ どうぶつの森」をミックスしたような作品になりそうです。もうひとつは、J・G・バラ—ドの小説「スーパー・カンヌ」の脚色です」と述べ、「今日は来てくださって本当にありがとうございました!みなさんの質問も本当に素晴らしくて、お話していて楽しくて最高でした。『インフィニティ・プール』が日本で公開されたことは僕にとって本当に重要なことです。改めてお礼を申し上げます」と感謝のメッセージを贈った。

【STORY】

高級リゾート地として知られる孤島を訪れたスランプ中の作家ジェームズは、裕福な資産家の娘である妻のエムとともに、ここでバカンスを楽しみながら新たな作品のインスピレーションを得ようと考えていた。ある日、彼の小説の大ファンだという女性ガビに話しかけられたジェームズは、彼女とその夫に誘われ一緒に食事をすることに。意気投合した彼らは、観光客は行かないようにと警告されていた敷地外へとドライブに出かける。それが悪夢の始まりになるとは知らずに……。

【作品情報】

監督・脚本:ブランドン・クローネンバーグ『アンチヴァイラル』『ポゼッサー』 /製作:NEON
出演:アレクサンダー・スカルスガルド『ターザン:REBORN』、ミア・ゴス『Pearl パール』、クレオパトラ・コールマン『月影の下で』、トーマス・クレッチマン『タクシー運転手 約束は海を越えて』、ジャリル・レスペール『イヴ・サンローラン』
2023年/カナダ・クロアチア・ハンガリー合作 / 英語 / 118分 / R18+ / 原題:Infinity Pool / 日本語字幕:城誠子 / 配給:トランスフォーマー
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公式サイト
X:@infinitypool_jp
Instagram:@transformer_inc

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