「放送禁止レベル!?」藤原竜也、”狂った演技”のおすすめ映画(2)。無意味な戦い…虚無感を生むその演技は?
演技の上手い俳優、アクションを得意とする俳優、コメディセンスに富んだ俳優…。優れた資質をもった役者がごまんといる中、藤原竜也ほど“殺気”にみちた演技で観る者を圧倒する俳優はいないだろう。殺し合いにのぞむ高校生、新興宗教の教祖、児童殺害犯…。今回は、藤原竜也の鬼迫の演技が堪能できる作品を5本セレクトした。
●演じるは殺し屋に狙われる新興宗教の教祖。ミステリアスなキャラクターを体現
『I’M FLASH!』(2012)
監督:豊田利晃
脚本:豊田利晃
キャスト:藤原竜也、松田龍平、水原希子、仲野茂、永山絢斗
【作品内容】
新興宗教団体の教祖・吉野ルイ(藤原竜也)は、ある夜、車両事故を起こし、相手を死亡させてしまう。ルイ自身は奇跡的に軽傷で済んだものの、事件のもみ消しを計る母と姉によって、ほとぼりが冷めるまで南の孤島に追放されてしまう。3人のボディーガードとともに長閑な日々を過ごすルイ。事故をきっかけに死生観に変化が生まれ、教団から去る意思を示すが…。
『青い春』(2001)『ナインソウルズ』(2003)とエッジの効いた青春映画を手がけてきた豊田利晃による、オリジナル作品。つかみどころのない性格の新興宗教の教祖を藤原竜也が演じ、彼と生活をともにするボディーガードを松田龍平が演じる。ストーリーは、シーナ&ザ・ロケッツの鮎川誠による同名楽曲が物語の着想源となっているという。
【注目ポイント】
主人公は藤原竜也演じる新興宗教の教祖。彼の身を守るはずのボディーガードが組織の命令で殺し屋になり、命をつけ狙う。筋書きだけみれば派手なアクション映画を想像しそうになるが、非常に静かな映画である。
作品の雰囲気をフラットで落ち着いたものにしているのは、生への執着を感じさせない、藤原竜也の脱力演技によるところが大きいだろう。藤原の命を狙う殺し屋のリーダー役を演じる松田龍平も感情の起伏が乏しく、ハードボイルドな演技に徹しており、両者の戦いは熱を帯びることなく、物語は中盤まで淡々としたムードで進んでいく。
一方、後半以降は徐々にアクション要素が増えていく。しかし、豊田利晃監督の十八番であるハイスピード撮影によってとらえられた藤原竜也のアクションはスタイリッシュには描写されず、殺し屋から必死に逃げようとする姿は人間臭く、リアルだ。命を賭して戦う藤原と松田も、組織の中では替えの効く存在であり、どちらが死のうが大局にさほど深い影響を与えることはない。その点、2人は似た者同士なのだが、シンパシーで結ばれることもなく、沖縄の雄大な自然の中で、淡々と命のやりとりを行う。
世界を救うため、あるいは恋人を救うため…。アクション映画では通常、戦うための切実な理由が用意されており、観客の感情移入を誘う。一方、戦うことの無意味さを強調する『I’M FLASH!』のアクションは、勧善懲悪が成立していない分、観る者をやるせない感情へといざなう。目の奥に狂気を含ませた藤原竜也の静かな演技は、作品の虚無的なムードを高めることに貢献している。
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