『相棒』で最も面白い回は? 興奮必至の神回5選【神戸尊編】及川光博しか勝たん…シリーズの歴史に残る傑作をセレクト
優秀だが変人の刑事・杉下右京が、相棒と共に事件を解決していくドラマ『相棒』。2000年から2024年現在まで続くシリーズは約400話を超え、テレビドラマの他にも映画や演劇としても親しまれている。今回は、2代目相棒・神戸尊(及川光博)の回の中でも伝説的なエピソードをセレクト。その面白さの真髄に迫る。(文・Naoki)
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【2代目相棒 神戸尊(及川光博)とは?】
キザでクールなエリート警官。庁内S(スパイ)として特命係へ送られるも、立場を捨てて“真っ当な警察官”になる為に特命係へ残った秀才。右京とは、時に対立をしながらも苛烈過ぎる絶対的正義を抑える役割を果たす。現在は警察庁の官房付へと異動し、度々特命係に力を貸している。
右京と尊の新コンビ! 初の事件に挑むに大苦戦!?
シーズン7「特命」
放送日:2009年3月18日
脚本:輿水泰弘
犯人役:前田吟
本作は“右京と神戸のスタンスの違い”が明確に描かれている。
神戸が初めて特命係へ出勤するが、右京の姿は見当たらない。右京は東京郊外の村で主婦の自殺を殺人だと考え捜査に当たっていたのである。
結論として、主婦には借金を抱えた息子がおり生命保険で息子を助ける為に夫へ自殺へ見せかけた殺害を依頼したのであった。
村の仲間は協力して彼等親子を守る為に山小屋を破壊し証拠隠滅や口裏合わせに奔走。右京が取った最終手段は、何も知らない息子に母親が自分の為に父親へ自身を殺させたという事実を告げて真実を話すように説得させることだった。
父親も村民も逮捕され、息子に保険金が下りないことが決まると、神戸は右京へ語る。「本来なら見過ごされていた筈の犯罪です。たまたま杉下警部の目に留まっただけ…なんというか不公平かなって」
本作は記念すべき神戸尊初登場回である。とはいえこの回が、初登場にも関わらず、神戸が大活躍する訳ではなく杉下右京の苛烈さを描くことに重きが置かれている。
だが神戸は決して空気になっている訳ではなく、最後に右京に対し“不公平”という強い言葉を投げかけて、良い意味で重苦しさに拍車をかけている。
当然ながら神戸も犯罪は見過ごせないし事件は解決すべきという思いは持っているが、事情によっては見過ごしてもいいというスタンスがきわめて新鮮であった。
息子の為に死んだ母親の想いを汲むか、それとも正しさを通してただの自殺者扱いにするか…。ここから神戸と右京は”相棒”でありながら時に対立をしていくというワクワクするような大筋が定まっていったと筆者は考える。