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オタクからアイドルへ…元乃木坂46高山一実だからこそ描ける泥臭いアイドル像とは? 映画『トラペジウム』考察&評価レビュー

text by 唐梨

元乃木坂46 1期生・高山一実が原作の映画『トラペジウム』が5月10日より公開された。連載時、現役トップアイドルとして第一線で活躍していた高山が、アイドルを夢見た少女のリアルな描写を繊細に描き、多くの共感を得た。今回は、主人公・ゆうの心情を紐解くレビューをお届けする。(文:唐梨)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】

アイドルらしからぬ主人公

(c)2024「トラペジウム」製作委員会
(c)2024「トラペジウム」製作委員会

元乃木坂46一期生の高山一実による小説が原作。乃木坂46現役時代に雑誌『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)で連載され、本作が長編小説デビュー作ながら、累計30万部のベストセラーとなった。

高山は千葉県南房総市出身だが、『トラペジウム』も、南房総市のある房総半島を元にしたと思われる架空の町を舞台としている。地元の女子高生の東ゆうが主人公で、本人が原石だと目を付けた3人をスカウトし、4人でアイドルグループ「東西南北」を結成していくという筋書きだ。高山自身がアイドルオタクからアイドルになった経歴ということもあり、どちらの視点も持っている人物だからこそのストーリーが見どころだ。

主人公の東ゆうは、アイドルらしからぬ主人公だ。というのも、アイドルグループ東西南北が結成されたのは、ゆうが意図的にアイドルに向いているであろう3人を見定め、スカウトしたからである。

ノートに計画や人物分析を書き、計画ごとにテーマを定めてブレないようにし、予定外の出来事が起きてしまった際もこまめに軌道修正を図る。アイドルになる目標に最短ルートで到達できるよう戦略を立案する賢さ、それを机上の空論で終わらせず実行できる行動力、人を動かすことにためらいを持たない我の強さ。

このように、ゆうの能力や才能はプロデューサー寄りなのだ。現にアイドルのオーディションには全て落ちており、だからこそ逸材をスカウトしてアイドルグループを作る戦略に舵を切ったところから、この物語は始まっている。

しかし、皮肉なことにメインキャラ4人のうち、一番アイドルになりたい欲が強いのはゆうであった。表舞台に立つことを誰よりも渇望しながら、適性は裏方に向いている。このアンバランスさが、ゆうという主人公の魅力だ。

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