『古畑任三郎』史上最高の神回は? 全43話の中で最も面白いエピソード5選。アイデアが天才的すぎる…傑作中の傑作をセレクト
三谷幸喜が脚本を手掛けた刑事ドラマ『古畑任三郎』が、放送開始30周年を記念してフジテレビ系列で一挙放送される。そこで今回は、これまで放送された全43話の中から、珠玉の神回を5つ紹介。古畑が対峙した最強の犯人や事件が起きない異色回など、ドラマの魅力を余すことなく紹介する。(文・編集部)
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『古畑任三郎』とは
田村正和演じる風変わりな刑事・古畑任三郎が、部下の今泉慎太郎(西村雅彦)、西園寺守(石井正則)とともに難事件の解決に挑む刑事ドラマ。
『刑事コロンボ』同様、犯人が事前に分かっている“倒叙もの”のミステリードラマとして知られており、2006年のファイナルに至るまで3作の連続ドラマと9本のスペシャル(うち一本は総集編)が作られている。
なお、脚本を担当した三谷幸喜は、本作をきっかけに一躍人気脚本家になり、2022年には3本目となる大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の脚本を担当している。
これぞ『古畑任三郎』!
犯人と古畑との丁々発止のやり取りが熱い神回
「しゃべりすぎた男」VS小清水潔(明石家さんま)
放送:1996年1月10日
演出:河野圭太
出演:田村正和、明石家さんま、西村雅彦、白井晃、秋本奈緒美、小高恵美
【作品内容】
敏腕弁護士で知られる小清水潔(明石家さんま)は、先輩弁護士の令嬢、稲垣啓子(小高恵美)との婚約が決まり、邪魔になったかつての恋人、向井ひな子(秋本奈緒美)の殺害を計画。ガラス製の水差しで彼女を撲殺し、声を偽って警察に通報した上で、殺害現場を後にする。と、小清水とすれ違いで、とある男が被害者のマンションを訪れる。その人物こそ、犯人と被害者の共通の友人だった刑事、今泉慎太郎だったー。
【注目ポイント】
額に手を当てながらねちっこく犯人を追いかけまわし、最後は舌鋒鋭く犯人を追い詰めるー。『古畑任三郎』といえば、おそらく多くの人がこういったキャラクターを思い浮かべることだろう。そういった意味では、この「しゃべりすぎた男」は古畑のイメージが決定的になった回といえるかもしれない。
本話は、シリーズ最高傑作と名高い第2シーズンの幕開けを飾る70分拡大スペシャル回。ゲストスターは“お笑い怪獣”明石家さんまで、公開当時は番組平均25.4%の高視聴率を叩き出した。
『古畑任三郎』の人気投票をすると必ずトップに上がるこの回。その最大の人気の理由は「熱い古畑任三郎」が見られることだろう。
小清水が去った後に殺害現場を訪れ、濡れ衣を着せられてしまう今泉。真犯人である小清水は、何の因果か彼の弁護を任せられてしまう。しかし古畑の目は決してごまかせない。「友人の人生がかかっているんです。必ずしっぽをつかんでみせます」といつになく息巻いている古畑の姿は、視聴者の胸を熱くさせること請け合いだ。
そして、なんといっても外せないのは後半の法廷劇だろう。このシーンでは、証人喚問に呼ばれた古畑が、突如として弁護士の小清水に矛先を向ける。そこからの15分は、もう古畑の独壇場だ。うろたえる小清水を相手に速射砲のごとくまくし立てる演技は、田村正和でしか演じられなかっただろう。
ちなみに本話、初稿では「ロックシンガーがマネージャーを殺害する」というあらすじだったという。しかし、会議でさんまが「全編古畑と犯人の会話で成り立っている回にしたい」と言ったことから大幅に改変され、さんまのキャラクターをそのまま反映したような「しゃべりすぎた男」が犯人になった。加えてトリックの穴も犯人の「しゃべりすぎ」に起因する極めて上品なものになっている。
そしてラスト。婚約者にも愛想を尽かされ虚しく散った小清水は、去り際に対戦相手の古畑と軽く会話を交わす。
「あんた、今すぐ司法試験受けなはれ」
「いやあ、自信ないです」
「できるだけ早くでっせ」
「どうしてですか?」
「決まってまっしゃろ。僕の弁護するんだ。…頼んまっせ」