美しく、危なっかしい…草彅剛が鋭い眼光で問いかける“清廉潔白”であることの是非とは? 映画『碁盤斬り』考察&評価レビュー
text by あまのさき
映画『碁盤斬り』が公開中。『孤狼の血』白石和彌監督がメガホンを取り、古典落語の演目『柳田格之進』をベースに描いた本作は、草彅剛演じる武士が、囲碁を武器に、武士の誇りを賭けて仇討ちに挑む感動のリベンジ・エンターテイメント作品。今回は、本作の見どころをお届けする。(文・あまのさき)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
草彅剛が武士の誇りを賭けて仇討ちに挑む
草彅剛演じる柳田格之進を見ていると、この人はなんと不器用なんだろう、と思う。いや、もしかしたら武士という生き物が不器用なのかもしれない。そんな男を、草彅が器用に演じていた。
囲碁について全く知識のないまま、『碁盤斬り』を鑑賞した。白と黒の碁石による陣取り合戦。囲碁がわかればもう少し違った印象を持ったのかもしれないが、碁盤の目の上に並ぶ白と黒が、次第に格之進の人柄を物語っているように感じた。清廉潔白に生きてきた男は、何事も白黒はっきりつけねば気が済まない。
もともと彦根藩に仕えていた格之進だったが、身に覚えのない嫌疑により藩を追われてしまう。江戸の長屋で娘のお絹とともに、裕福とは縁遠い生活を送っていた。
草彅とお絹を演じた清原果耶。2人は纏う空気が似ているように感じた。
どこでどう暮らしていようと、決して穢されることのない精神のようなもの。見栄もなければ人を出し抜くなんてこともない。そんな2人が互いに思い合っているからこそ、長屋暮らしも不幸には見えない。静かな水面のような生活だ。