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「藤原季節の芝居には嘘がない」映画『東京ランドマーク』プロデューサー・毎熊克哉&主演・藤原季節&林知亜季監督、特別鼎談

text by 山田剛志

映像製作ユニット「Engawa Films Project」の第一回長編作品『東京ランドマーク』が公開中だ。今回は、メガホンをとった林知亜季監督、プロデューサーとして制作を支えた毎熊克哉さん、主演を務めた藤原季節さんにインタビューを敢行。作品が完成するまでの紆余曲折、映画にかける思いを伺った。(取材・文:山田剛志)

毎熊克哉「僕は一旦制作から抜けたんです」
クランクイン前の舞台裏について

毎熊克哉。写真:武馬玲子

俳優の毎熊克哉。写真:武馬玲子

 

―――本作は2008年に毎熊さん、林監督を含めた4人で結成された映像製作ユニット「Engawa Films Project」の第一回長編作品です。林監督に伺いたいのですが、映画をスタートさせるにあたって着想源となったものは何でしたか?

林知亜季(以下、林)「物語のアイデアよりも先に藤原季節と義山真司、2人の俳優を撮りたいという思いがありました。そこから時間を見つけては2人に会って話を聞いて、それを基に話を作っていくという流れでした」

―――藤原さんが演じられた稔という役には、藤原さん自身の要素が反映されているのですね。林監督から取材を受ける日々を振り返って、藤原さんはいかがでしょうか?

藤原季節(以下、藤原)「取材を受けていた、というよりかは、喫茶店で雑談をしていた感覚に近いです。当時、僕は家族との関係に悩んでいたり、将来に対して不安もあったりして。その辺りも含め、その時自分が感じていたこと、考えていたことを率直に話しました」

―――近年、役者としてのご活躍が目覚ましい毎熊さんですが、本作では出演者ではなく、プロデューサーとして参加されています。どのような経緯がありましたか?

毎熊克哉(以下、毎熊)「先ほど2人が話したとおり、今回の作品は・林さんと季節と真司(義山真司)の3人の対話からスタートしていて、元々Engawaの作品にするという予定ではなかったんです。僕らが呼ばれたのは、3人による濃密な対話を経て、脚本が出来上がった後の段階。そこで『これ、来月から撮り始めたいんだけど』と言われて…」

―――急展開ですね。脚本を読まれて率直にどのようなことを思われましたか?

「僕も役者として今まで色んな脚本に目を通してきましたが、最初の感想としては『これは一体どういう映画になるんだろう』と。長編として世に問うのであれば、やっぱりちゃんとしたものを作りたいなっていう思いがあって。

林さんとはかれこれ15年以上の付き合いですし、季節とも友達として長く付き合ってきました。そんな2人の思いが詰まった作品だからこそ、しっかり準備に時間をかけて満足のいく形にしてもらいたい。『そんなに急ぐ必要があるのかな』と思ったのが正直なところでした」

―――作品を良いものにしたいという思いは一緒だけれども、それを形にするにあたって、描いている方向性が別々だったということですね。林監督としては、準備に時間をかけるのではなく、すぐにでも撮りたいというお気持ちが強かったと。

林「今となっては毎熊くんが言ってくれたこともわかるんですけど、その時は受け入れ難いものがあって。『じゃあ、参加してくれないんだ』みたいな感じで、当時はバチバチに揉めました」

―――そんな舞台裏があったのですね。どのようにして落としどころを見つけられたのでしょうか?

毎熊「それがクランクインまでに落としどころが見つからなかったんです(笑)。『もう勝手にしろ』って、他のEngawaメンバーはどうだったのか覚えていませんが、僕は一旦抜けたんです」

藤原「でも結局、クランクインしたら、毎熊さんも含めたEngawaの人たちが現場に駆けつけてくださって」

毎熊「そこが友達のややこしいところで(笑)。やっぱり自主で映画を作っていると『あれが足りない、これが足りない』ということは日常茶飯じゃないですか。そういう情報が耳に入ると、『じゃあ行くよ』とならざるを得ない」

―――本作の裏には毎熊さんの男気があったのですね。ちなみに、藤原さんはクランクイン前後のバタバタをどのようにご覧になっていましたか?

藤原「鉄は熱いうちに打て、じゃないですけど、僕も早く撮りたいという一心でした。一方で、実はクランクイン直前に真司と喧嘩をしまして。僕らは僕らでゴタゴタがあったんですよ」

林「季節からいつもとは違うテンションのメッセージが来ていて。『今、真司と喧嘩をしている』と。とはいえ結局、1週間くらい経ったら、ベロベロの2人から連絡があって『いつ撮りますか?』みたいな(笑)。肝を冷やしましたけど、『撮れるうちに撮らないと』という気持ちをより一層強くした出来事ではありました」

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