「映画監督の一番の仕事はキャラクターを魅力的に映すこと」映画『告白 コンフェッション』山下敦弘監督、単独インタビュー
雪山で遭難した親友同士が、とある告白をきっかけに極限状態に追い込まれる―。原作・福本伸行、作画・かわぐちかいじによる同名漫画を実写化した映画『告白 コンフェッション』が5月31日より公開される。今回は、メガホンをとった山下敦弘監督へのインタビューをお届け。作品に込めた思いを伺った。(取材・文:山田剛志、タナカシカ)
「生田さんが浅井のキャラクターを深めてくれた」
原作と異なる主人公・浅井の造形について
――今回の作品、結末を含め原作とは異なる展開が見ものです。例えば、主人公の浅井は原作だと計算高いイメージが強いのですが、映画版では何とも言えない人間臭さがある。主人公のキャラクターを造形する上でどのようなことを意識されましたか?
「原作では基本的に疑心暗鬼に陥った浅井の視点で物語が語られていきますよね。今回、映画にする上で明確に意識したのは、モノローグに頼らないようにしようということでした。せっかく映画にするのだからアクションと登場人物の表情によってサスペンスを醸成できないかと思ったんです。
浅井の見え方が原作と違うという話ですが、原作では浅井が自分からドツボにハマっていって、どんどん空回りしていきますが、映画版では、他言語を話す人間を前にしたジリジリくる怖さを描こうと思いました。モノローグを排したことによってそうした印象は強まったと思います」
――序盤、浅井が小屋で寝落ちしかけるシーンにはちょっと笑ってしまいました。原作の浅井は「こんな状況で寝るなんてとんでもない」という感じですが、映画の浅井は少しのんびりしたところがあります。この人、こんな状況でも寝られるんだって。そこから浅井というキャラクターと作品世界に引き込まれていきました。
「浅井もちょっとかわいいのですよ。初見では『怖い』という印象を持つ人が多いと思うのですが、2回、3回見ていくと、実は2人とも結構ドジで、かわいらしさがあることに気付く。そこは生田斗真とヤン・イクチュンという組み合わせがなせる業でもあるし、自分のテイストも入れられたかなと思います」
――浅井のかわいらしさという点では、生田斗真さんが演じているというのも大きいのかなと思いました。
「確かに、生田さんが浅井のキャラクターを深めてくれたのは間違いないですね。原作の浅井は理屈っぽくてクレバーな感じですが、爽やかでフレンドリーな生田さんが演じてくれたことで、角が取れて温かみのある浅井になったのかなと。特に、彼がジヨンを説得するシーンは、明らかにやり方が間違っていますが、生田さんが演じてくれたことでとても面白くなったと思います」