案外普通の人だった…松下洸平”コウタロウ”の正体にヤキモキするワケ。ドラマ『9ボーダー』第8話考察&感想レビュー
text by 菜本かな
川口春奈がTBS金ドラ初主演。木南晴夏&畑芽育と3姉妹役を演じるドラマ『9ボーダー』。19歳、29歳、39歳…各年代のラストイヤーで、3姉妹がモヤり、焦りながら、自分の生きる道を模索するヒューマンラブストーリー。今回は第8話のレビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
コウタロウの正体が判明した第8話
コウタロウ(松下洸平)の正体が判明した『9ボーダー』(TBS系)第8話。彼の本当の名前は、柴田悠斗。神戸で家族経営をしている不動産会社の副社長で、商店街の再開発プロジェクトに関する交渉をするために、おおば湯の近くに来ていたらしい。毎朝8時半に鳴るアラームは、ミーティングの開始時刻で、口座にあった1億円は祖父の遺産。さらに、百合子(大政絢)という婚約者までいた。
七苗(川口春奈)は、いつかこんな日が来ると予想していたのだろう。この幸せな時間は、永遠に続くわけじゃない。記憶を失う前のコウタロウを大事に想っていた人はきっとどこかにいて、その人が現れたら彼を返さなければならない。だから七苗は、後悔がないように全力で恋をした。
コウタロウ自身も、「もっと嬉しいと思ってた。自分が誰か分かったら、不安がストンとなくなって、目の前が明るくなるんだろうなって」と話していたが、視聴者も同じ気持ちだ。むしろ、危ない仕事をしている人だった…というオチの方が、七苗もまだ前に進めたかもしれない。でも、柴田は案外普通の人だった。
柴田家は、まるで『やんごとなき一族』(2022年/フジテレビ系)を彷彿とさせるような豪華な一族ではあるが、危ない仕事をしているわけじゃない。だから、嫌いになる理由を探そうとしても探すことができず、一緒にいられる理由を見つけられないことが切ない。
もしも、最悪の環境にいたのなら、七苗も「ここにいれば?」と声をかけられたかもしれないが、コウタロウは柴田悠斗に戻ったとしても、不幸になるわけじゃない。