『相棒』史上最高の神回は…? 亀山薫編の最高級傑作(3)夢オチで神展開…禁じ手を見事に昇華させた脚本とは?
変人だが腕が立つ刑事の杉下右京と、その相棒が事件を解決していくドラマ『相棒』。シリーズは2000年から2024年現在まで、約400話のテレビシリーズを始め、様々なコンテンツで親しまれている。今回は初代&5代目相棒・亀山薫(寺脇康文)の回の中でも伝説的なエピソードをセレクト。その面白さの真髄に迫る。(文・Naoki)
——————
秀逸な展開に驚き! 夫婦がもった殺意の行方とは?
『新・Wの悲喜劇』シーズン6
放送日:2008年3月5日
脚本:輿水泰弘
犯人役:白鳥晋三
【神回である理由】
この作品の選出理由は“刑事ドラマとしての異質さ”である。
主婦の白鳥寿々美は旦那の晋三が嫌いで仕方なかった。日常生活でも包丁を持てば刺し殺したいと思い、ネクタイを持てば首を絞めたいと思う程に嫌悪感を抱いており、もはや殺意であった。
遂に寿々美は晋三の殺害を企てる。
仕事が終わり浴場に入った晋三をドライアイスのガスで昏倒させ、自身はガスマスクをしながら彼を熱湯風呂に入れ全身火傷で殺す。計画は見事成功し、晋三は命を落とす。
しかし彼女には誤算があった。マンションの下の階の住民は亀山薫だったのだ。更に運の悪い事に犯行当時、杉下右京も訪問していたのである。
寿々美は2人に家を調べられ、また発言の矛盾を突かれて追い詰められる。
万事休す…と思った時、寿々美は目を覚ます。
まだ殺人は実行されておらず、晋三の帰宅を待ちながら寝てしまっていたのである。タイミングよく晋三の帰宅を告げるチャイムが鳴り、寿々美は玄関のドアを開ける。
しかし現れたのはサングラスをかけた謎の男。男は寿々美へナイフを突き立て殺そうとするが、間一髪で特命係に助けられ事なきを得る。
謎の男の正体は晋三に雇われた殺し屋。晋三は寿々美の殺意に気付いており、殺される前に殺そうと依頼していたのである。寿々美は殺意を否定し、晋三は亀山達に連れていかれる。
しかし“大量のドライアイス”と“ガスマスク”で寿々美が何かを計画していた事を察した右京は彼女へ囁く。
「どうか今夜はご自分の幸運に感謝しながらお休みください。実行に移すチャンスに、恵まれなかった事を…」
本作は刑事ドラマではなくまるで『世にも奇妙な物語』のようなSFのような作品だ。
夢オチという禁じ手を使いながらも、その描写を伏線として昇華している。
脚本家は『相棒』メインライターの輿水泰弘。重要回だけでなく相棒ワールドを広げる為に台詞、細部の描写、構成とあらゆる面で自由度を増している。
因みにS5「Wの悲喜劇」という同じく輿水氏が脚本の異色作もあるので、本作が好きな方は是非ともこちらも観てほしい。
【関連記事】
『相棒』史上最高の神回は…? 亀山薫編の最高級傑作(1)
『相棒』史上最高の神回は…? 亀山薫編の最高級傑作(4)
『相棒』史上最高の神回は…? 亀山薫編の最高級傑作(全作品紹介)