『相棒』屈指の神回は? 成宮寛貴が最高…甲斐享編の傑作(2)ファン垂涎の物語…美しく残酷な珠玉の一作とは?
優秀だが変人の刑事・杉下右京が、相棒と共に事件を解決していくドラマ『相棒』。2000年から2024年現在まで続くシリーズは約400話を超え、テレビドラマの他にも映画や演劇としても親しまれている。今回は、3代目相棒・甲斐享(成宮寛貴)の回の中でも伝説的なエピソードをセレクト。その面白さの真髄に迫る。(文・Naoki)
———-
杉下右京ファンには堪らぬ珠玉の一作
●シーズン12「右京さんの友達」
放送日:2014年1月22日
脚本:真野勝成
犯人役:尾美としのり
本作は”物語としての美しさ”
趣味は自分のHPでミステリー小説の批評、口癖は「信じられるのは紅茶と犬だけ」という毒島浩一42歳無職。同じ紅茶好きとして右京と意気投合した毒島はカイトも交え自宅での茶会を開催する。和やかに茶会は進むが、毒島は隣室の佐藤静香が小説家である恋人の烏森に殺された事件を語り始める。
事件に興味を持った特命係は捜査を開始。そして導き出された結論は毒島が静香を殺害していたというものだった。静香と毒島は犬の繋がりで親しくなっており、毒島は彼女に淡い想いを持っていた。しかし烏森は小説が売れず思い悩んだ末に静香を殺して自分も死のうとする。
二人は揉み合いになり、烏森は昏倒してしまう。しかし烏森が死んだと思った静香は駆け付けた物音を聞いて駆け付けた毒島にナイフを握らせ、そこへ飛び込み死亡していたのであった。
毒島は彼女が飼っていた犬が死ぬのを見届け、また右京に逮捕して欲しい気持ちがあり茶会を開いていたのである。警視庁へ連れられた毒島を見て、捜査一課は彼が何者か尋ねるとカイトが答える。
「右京さんの、友達です」
杉下右京は”孤独ではなく孤高の存在である”という事が如実に表れた一作。本作は右京が執筆する探偵小説『孤独の研究』の独白を織り交ぜながら進んでいく。毒島との出会いと交流、助手K君(カイト)との丁々発止のやり取り、文学小説のような美しくも残酷で事件。
紅茶という右京にとって重要なアイテムをこれでもかと活用して深みを持たせ、また作中で名前こそ出さないが亀山について言及があるなどファンが喜ぶ小憎らしい演出も多い。脚本家の真野氏は本作が『相棒』初脚本で、以降も『相棒』の歴史にフォーカスを当てたファン垂涎の物語を数多く執筆されている。
中でも本作はプロデューサーと打合せを重ねて誕生した珠玉の一作である。杉下右京が好きな人には必ず刺さると太鼓判を押してお勧めしたい。
【関連記事】
『相棒』屈指の神回は? 成宮寛貴が最高…甲斐享編の傑作(1)
『相棒』屈指の神回は? 成宮寛貴が最高…甲斐享編の傑作(3)
『相棒』屈指の神回は? 成宮寛貴が最高…甲斐享編の傑作(全作品紹介)