ホーム » 投稿 » 5選記事 » 『アンメット』「終わり」を描かないラストの素晴らしさ。稀代の名作となった5つの理由(5)「描きすぎない」ことの大切さ

『アンメット』「終わり」を描かないラストの素晴らしさ。稀代の名作となった5つの理由(5)「描きすぎない」ことの大切さ

text by かんそう

杉咲花が主演を務めたドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)。若葉竜也や岡山天音など、俳優たちによる名演技も相まって、その興奮と衝撃はいまだ冷めない。ドラマ史上に残る傑作となった本作の魅力を5つのポイントに分けて深掘り考察する。 (文・かんそう)

————————————

【著者プロフィール:かんそう】

2014年から、はてなブログにてカルチャーブログ「kansou」を運営。記事数は1000超、累計5000万アクセス。読者登録数は全はてなブログ内で6位の多さを誇る。クイック・ジャパン ウェブ、リアルサウンド テックなどの媒体でライター活動を行うほか、TBSラジオで初の冠番組『かんそうの感想フリースタイル』のパーソナリティも務め、2024年5月に初書籍『書けないんじゃない、考えてないだけ。』を出版した。

アンメットが名作になった理由⑤
明確な「終わり」を描かないラスト

『アンメット』第11話より ©カンテレ
『アンメット』第11話より ©カンテレ

 このドラマが「伝説」になったと確信したのは、最終回のラストのセリフだ。手術を終え、目を覚ましたミヤビに三瓶が声をかける。

「わかりますか?」「わかります」ここでドラマは幕を下ろす。

 これが並のドラマであれば、第3者が「記憶が戻ったんだね?」だの「昨日のことは覚えている?」だのと説明セリフを入れ、ミヤビや三瓶、病院のメンバーの日常を描き、最後は2人がプロポーズをやり直すシーンで終わるだろう。

 しかし、それをあえて描かずに「わかりますか?」「わかります」という問いかけのみ、その先の未来はドラマの中の人間だけが知っている。このような終わり方は、ともすれば「ここまで見てきてフワッと終わらすなよ」という批判を受けかねない諸刃の剣だ。

 しかし、アンメットはその「描かない」ことを11話続けてきた。1話から描くことと描かないことのバランスを崩すことなく、丁寧に丁寧に物語を積み重ね続けてきたことからこそ成立した究極のラストなのだ。

 以上、「アンメットが名作になった理由5選」とさせていただいたが、小道具の使い方の上手さ、カメラワークの素晴らしさ、主題歌とのリンク、など正直50選でも足りないくらいだ。しかし、私はあえて「書かない」という選択を取りたい。残りの47選はきっと、アンメットを視聴した1人ひとりの中にあるのだから…。

(文・かんそう)

【関連記事】
『アンメット』が稀代の名作となった5つの理由(1)
『アンメット』が稀代の名作となった5つの理由(2)
『アンメット』が稀代の名作となった5つの理由(全ページ)

error: Content is protected !!