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トラウマ級の名演…日本映画史上”最高の悪役”で評価上げた俳優(2)残虐性と狂気…伝説のアイドルの豹変とは

映画には実に様々なキャラクターが登場する。その中にはいい人ばかりではなく、悪役も存在し、そして観客はいつの間にか悪役に感情移入していたりするものだ。今回は日本映画史で最も記憶に残る悪役5人をセレクト。作品の内容に加え、悪役を演じた5人の役者の魅力も解説。映画史上に残る「嫌な奴ら」を紹介していく。(文:村松健太郎)

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あのハンニバル・レクターを彷彿とさせる怪演

『踊る大捜査線THE MOVIE』(1998)小泉今日子

女優の小泉今日子

女優の小泉今日子【Getty Images】

監督:本広克行
脚本:君塚良一
キャスト:織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、水野美紀、ユースケ・サンタマリア、いかりや長介、小泉今日子

【作品内容】

空き地署と揶揄される湾岸署の熱血刑事・青島(織田裕二)。そんな彼が同時期に起きた胃の中に熊のぬいぐるみが入れられるという猟奇事件と警視庁副総監拉致事件に立ち向かう。

【注目ポイント】

ドラマ放映時は中ヒットと言ったところだった刑事ドラマ「踊る大捜査線」。織田裕二演じる主人公の青島をあくまでも一公務員として描くなど当時として斬新だった描き方や、細かい小ネタなどが当時勃興していたインターネットとうまく絡み合うことで注目のコンテンツとなり、その後スペシャルドラマや映画版へ展開し続ける大ヒットシリーズとなった。

“湾岸署史上最悪の3日間”の副題の通り、猟奇殺人事件、警視庁副総監拉致事件などなど大事件が次々と起きる。猟奇殺人鬼役を演じるのが小泉今日子だと発表された時は世間を大いに騒がせた。

1980年代を代表する女性アイドルである小泉が演じた日向真奈美は、自殺志願者とコンタクトをとっては、殺人に手を染めるのみならず、遺体の胃の中にクマのぬいぐるみを埋めこむといった残虐性と狂気の持ち主。生に未練がないのか、逮捕された後は、絞首刑を希望するなど、感情移入の余地のないキャラクターだ。

数多くの映画やドラマからの引用やオマージュで知られる“踊るシリーズ”らしく、小泉演じる日向真奈美は明らかに『羊たちの沈黙』(1991)のハンニバル・レクター博士を彷彿とさせるキャラクターとなっている(青島が事件についての助言を求める場面アリ)。

端正な容姿だが、笑うと歯の矯正器具が不気味に光る。サイコパスの口まわりに視線を誘導する演出は、元ネタである『羊たちの沈黙』でも見られる(レクターの口を隠す鉄のマスク、看守に嚙みついた後に口元を真っ赤に濡らす血)が、こうした役を日本芸能史に残るアイドルである小泉にあてがうアイデアは極めて独創的だ。幼少期に本作を観て、小泉の笑顔にトラウマを植え付けられた人は多いのではないだろうか。

本作を機に、小泉の女優としての実力も世間に知れ渡ることになり、相米慎二の遺作となった『風花』(2001)では風俗嬢役を体当たりで熱演。以降、日本映画に欠かせない女優となった。

ちなみに、小泉が演じたサイコパス・日向真奈美は映画シリーズ第3弾『踊る大捜査線THE MOVIE3奴らを解放せよ!』(2010)にも顔を出している。

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