上半期の民放ドラマ、 最も優れた演技をみせた女優は…?(4)評価が急上昇…最終回の繊細な演技に泣かされた
胸キュン必至の恋愛モノや、胸を打つ医療モノをはじめ、2024年の上半期は話題作に恵まれた。作品がヒットする要因は多くあるが、役者の働きによるところは大きい。そこで今回は、中でも素晴らしい活躍を見せた女優を独自の視点で選出。殊勲賞、敢闘賞、技能賞、準MVP、MVPに分けて、その芝居の魅力を解説していく。(文・あまのさき)
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静かに感情を揺さぶる卓越した演技力
準MVP:堀田真由『アンチヒーロー』
法は誰のためにあるのか、正義とは何なのかという疑問を投げかけ、ドラマファンからアツい注目を集めた日曜劇場『アンチヒーロー』。長谷川博己演じる弁護士の明墨正樹がダークヒーローとして抜群の存在感を放ち、最終話で見せた宿敵・伊達原泰輔(野村萬斎)との壮絶な一騎打ちは話題をさらった。
そうそうたるキャストが揃った本作で、堀田真由は明墨法律事務所で働く若手の弁護士・紫ノ宮飛鳥を演じた。
ルールなんかお構いなしの明墨流のやり方で事件に必要な情報を収集していく紫ノ宮。序盤こそ、自分の仕事に何ら疑問を抱いていないかに見えたのだが、クローズアップされるにつれて時に困惑している様子を見せるなど、序盤から堀田の奥行きを感じさせる芝居が光った。
繊細な演技でドラマを脇から支え続けた堀田は、最終話でも見せ場をつくった。対峙する相手は、物語の主軸であり、明墨がこだわり続けた糸井一家殺人事件の証拠を隠滅したとして逮捕されていた紫ノ宮の父・倉田(藤木直人)だ。
まもなく拘留が解かれることを伝えに来た娘に対し、倉田は自分の弁護を降りるように言う。「娘に守られる父親なんて、かっこ悪いだろ?」と。その倉田の言葉に、“父”を感じたのだろう、紫ノ宮は涙を流し、「また来るから、お父さん」と告げるのだった。
刑事と弁護士という立場の違いから、ずっと緊張感のあった2人の関係が父娘に戻った瞬間が、手に取るようにわかった。派手なシーンではないものの、多くの視聴者の涙を誘ったことは間違いない。静かに感情を揺さぶる、堀田真由の真骨頂とも言える場面であった。
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