お粗末すぎて逆に面白い…史上最悪の日本のアクション映画(1)「ぽっと出」の主演がぶち壊し…伝説の問題作は?
仮面ライダーからマーベルまで、いつ時代も子供たちの心をわしづかみにしてきた「アクション映画」。しかし、中には予算や演技といった大人の事情から残念な出来になってしまった作品も存在する。今回は、その中でも特につまらないと言われる伝説の駄作5本を紹介。ストーリーや演技など、さまざまな角度から切り込んでいく。(文・ZAKKY)
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観客全員置いてけぼり! 日本映画史に残る伝説の問題作
『デビルマン』(2004)
監督:那須博之
脚本:那須真知子
原作:永井豪
出演者:伊崎央登、伊崎右典、酒井彩名、渋谷飛鳥、宇崎竜童、冨永愛、染谷将太、阿木燿子
【作品内容】
数年前に両親を失った不動明(伊崎央登)は、親友・飛鳥了(伊崎右典)の父の死をきっかけに、南極の地盤調査により覚醒した邪悪な知的生命体デーモンと合体する。強靭な精神力によりなんとか人間の心を残した明は、半人半魔の「デビルマン」に転生。人類を滅亡へと導くデーモンのデーモンたちと孤独な戦いを続けていくが、やがて最終戦争へと発展し…。
【注目ポイント】
『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズ(1985~1988)で知られる那須博之監督作品。原作は永井豪による同名漫画で、脚本を那須の妻である那須真知子が務める。
邦画史上に残る問題作としてしばしば話題になる本作。その最大の「戦犯」は、双子の兄弟である不動明役の伊崎央登と飛鳥了役の伊崎右典だろう。
第13回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリと審査員特別賞を受賞し、鳴り物入りで芸能界デビューした2人。「ぽっと出」だけあって、演技力の低さがどうしても目についてしまう。棒読みのセリフに加え、小学生のような幼稚な声色で「ウオオオオ!」とシャウトする演技には、「腹から声出せ!」と見ているこちらがシャウトしたくなる。
ストーリーもツッコミどころが満載だ。冨永愛演じる女性デーモン・シレーヌは唐突に登場するし、親友だと思っていた飛鳥了も自身がデーモンであることを唐突に告白する。デーモンが町を襲う場面も描写不足だ。
原作の要素が限られた尺にぶちこまれていて、「人間とデーモン、どっちが悪魔なのか」というコンセプトがちっとも伝わってこないのだ。おそらく原作未読の観客は、終始頭にクエスチョンマークを浮かべながら鑑賞していたのではないだろうか。
とはいえ、非難ばかりではさすがに大人げないので、良いところを2点だけ紹介しよう。
まずはCG表現。本作では、アニメでまずは作画を行い、それにCGをつけるという「アニメと実写の融合」を試みている。日進月歩のCG表現だけに今観るとさすがに古く感じられる部分もあるが、製作費10億円をかけているだけあってさすがに見応えがある。
シレーヌ役の冨永愛の演技にも注目だ。近年は、ドラマ『大奥 8代・徳川吉宗×水野祐之進編』(2023、NHK)の徳川吉宗役などで存在感を放つ冨永だが、本作では地の個性を生かしつつ、架空の存在であるシレーヌを「冨永テイスト」に昇華している。「なにを演じても○○」といわれる役者が多い中、冨永のような存在は貴重といえるだろう。
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