お粗末すぎて逆に面白い…史上最悪の日本のアクション映画(2)やっちまった感満載…情熱が空回った理由とは?
仮面ライダーからマーベルまで、いつ時代も子供たちの心をわしづかみにしてきた「アクション映画」。しかし、中には予算や演技といった大人の事情から残念な出来になってしまった作品も存在する。今回は、その中でも特につまらないと言われる伝説の駄作5本を紹介。ストーリーや演技など、さまざまな角度から切り込んでいく。(文・ZAKKY)
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盛り上がりがイマイチ…!
名脚本家が参加した「敵が出てこない活劇映画」
『カムイ外伝』(2009)
監督:崔洋一
脚本:崔洋一、宮藤官九郎
出演者:松山ケンイチ、小雪、大後寿々花、金井勇太、PANTA、土屋アンナ、芦名星、佐藤浩一、イーキン・チェン、小林薫、伊藤英明
【作品内容】
剣の達人である忍者、カムイ(松山ケンイチ)は、理不尽な殺戮と掟が蔓延している忍の世界に嫌気がさし、真の自由を求めて脱走した。しかしそれは同時に、裏切り者として追っ手と戦う運命を背負うことでもあった。ある日、助けた恩から漁師の半兵衛(小林薫)の家族に迎え入れられたカムイだったが、彼の妻は抜忍となったかつての仲間スガル(小雪)だった。カムイのことを追っ手と勘違いし、心を許さないスガル。そして、時の藩主・水谷軍兵衛(佐藤浩市)に捕らわれてしまう半兵衛。彼らの行く末は…?
【注目ポイント】
『血と骨』(2004)で知られる崔洋一監督がメガホンを取った忍者アクション。脚本は宮藤官九郎(クドカン)が務め、主人公カムイを松山ケンイチが、スガルを小雪が演じる。
クドカンといえば、ドラマ『不適切にもほどがある!』(2024、TBS系)で世間の話題をかっさらった推しも推されぬ大脚本家だ。それなのに、本作から漂う「やっちまった感」は尋常ではない。
まず、本作にはわかりやすい敵キャラが登場しない。そのため、カムイを追う伊賀の追忍たちとの邂逅シーンや、スガルと共に半兵衛を助けに行くクライマックスシーンもイマイチ盛り上がりに欠ける。また、藩主の家来が半兵衛を追うシーンにも、スリリングさが感じられない。おまけに、ワイヤーアクションやCGも惨憺たる出来だ。
そもそも、崔もクドカンも、この手のアクション映画は本流ではないはずだ。もともと原作が好きだった2人が意気投合し、情熱ばかりが空回ってしまったのは想像に難くない。
また、本作は完成までにトラブルが相次いだ作品としても有名。完成版では小雪が演じた抜け忍・スガル役は当初、菊地凛子がキャスティングされていたが、砂浜を疾走するシーンで全治8週間の怪我(大腿筋肉離れ)を負い、あえなく降板。主演の松山も撮影中に右太ももを打撲する全治3週間の怪我を負い、撮影スケジュールは延びに延びた。
上述したとおり難産だったこの作品、主演の松山ケンイチの演技には、ご多分に漏れず鬼気迫るものがある。「映画」という総合芸術を作り上げること、そして、漫画原作を翻案することがいかに難しいかを教えてくれる作品だと言えるだろう。
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