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90年代日本のアニメ映画、最高傑作は? 不滅の超名作(3)巨匠が大集結…圧倒的に面白い、知る人ぞ知る名品

今や日本のカルチャーの代名詞であるアニメ。1990年代はアニメを取り巻く状況が大きく変化した10年であった。テレビアニメは広告収益だけでなく「OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)を収録したVHSを小売りする」ビジネスに変化していき、深夜アニメも一気に増えた。今回は90年代の名作アニメ映画を5本紹介。(文・ジュウ・ショ)

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これでもか!というスタッフの豪華さ。時代を先取りした知られざる名作

『老人Z』(1991)

監督の大友克洋【Getty Images】
大友克洋Getty Images

上映時間:80分
監督:北久保弘之
脚本:大友克洋
原作:大友克洋
キャスト:松村彦次郎、横山智佐、小川真司、近石真介、佐藤智恵、松本梨香、辻谷耕史

【作品内容】

 高沢喜十郎は、先立った妻・ハルを想いつつ、寝たきりで独り暮らしをしており、19歳の三橋晴子は、高沢の介護ボランティアをしていた。厚生省は、高齢化社会対策でベッド型の介護ロボット「Z-001号機」を考案、喜十郎はそのテスターとして拉致され「Z-001号機」の支配下に置かれる。晴子は、見舞いに行くが、チューブにつながれた喜十郎を見てショックを受け、知り合いの老人ハッカーと一緒に助けようとするのだが…。

【注目ポイント】

 『老人Z』も1990年代では外せない名作だ。特筆すべき点は「スタッフの豪華さ」である。

 原作は『AKIRA』の大友克洋。キャラクターデザインは『ストップ!!ひばりくん!』の作者・江口寿史というゴールデンコンビが務めた。そのほか美術設定は『パーフェクトブルー』(1997)、『パプリカ』(2006)を手がけた天才アニメーター・今敏だ。

 また原画のメンバーがえげつない。『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)の作画監督・沖浦啓之、『猫の恩返し』の監督・森田宏幸、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの監督・鶴巻和哉、『攻殻機動隊』や『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの作画監督・黄瀬和哉とそうそうたるメンツだ。

 このほか最近『呪術廻戦』で総作画監督を務めた平松禎史、『ふしぎの海のナディア』(1990~1991)『君たちはどう生きるか』(2023)などの作画監督・本田雄、映画『キル・ビル』(2003)のアニメパートで監督を務めた中澤一登、『名探偵コナンシリーズ』で長年、総作画監督を務めている須藤昌朋などが名を連ねる。

 とにかくスゴい顔ぶれだ。1990年代から現在にいたるまで、日本のアニメ産業を支えてきた面々である。『老人Z』はそんなクリエイターたちによって作られた珠玉の一作である。

 スタッフの顔ぶれに圧倒されるが、内容ももちろん面白い。大友克洋には珍しくギャグ全開の作品だが、ギャグ漫画家・江口寿史の個性が上手く加味されている。AIやロボット工学の進歩が目覚ましい昨今、本作で描かれたような全自動看護ロボットが実用化される日も遠くないと思われる。本作の先進性には目を見張るものがある。

 複数の天才クリエイターたちがしのぎを削った現場だからこそ、時代を先取りするような表現が生み出されたのかもしれない。とはいえ、今観ると、現実感がありすぎて、逆に笑えないという難点もあるのだが…。何はともあれ、日本アニメ史のマスターピースとして、必ず押さえておきたい一作である。

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