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今こそリメイクしてほしい…! 80年代が産んだ日本映画の傑作(1)衝撃展開の連発で…令和版ならどうなる?

text by 編集部

空前のバブル景気が到来した1980年代は、日本にとって特別な時代だった。今やすっかりジリ貧になってしまった日本だが、当時の映画をリブートすることで、あの頃の気持ちに戻れるかもしれないー。というわけで、今回は1980年代のヒット作を令和にリメイク、あるいはリブートしたらというテーマで、作品を5本紹介する。(文・編集部)

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もし令和版が作られたら「毒親」が登場? 80年代の家族像の崩壊を描いた傑作

『家族ゲーム』(1983)

松田優作
松田優作Getty Images

上映時間:106分
監督:森田芳光
原作:本間洋平『家族ゲーム』
脚本:森田芳光
出演:松田優作、宮川一朗太、伊丹十三、由紀さおり

【あらすじ】

 ある日、4人家族の弟・茂之のもとに、6人目の家庭教師・吉本勝がやってくる。無名の大学に7年籍を置き、到底優秀な人物とは言えない吉本だったが、鉄拳制裁も辞さない覚悟で落ちこぼれの茂之をしごきはじめる。

【注目ポイント】

 1980年11月29日の深夜、神奈川県川崎市のとある住宅街で事件は起こった。大学受験を控えた予備校生のAが、眠っている両親の頭に金属バットを振り下ろしたのだ。犯行の動機は、Aの成績が上がらないことに業を煮やした父親が彼を罵倒したことだったといわれている。

 さて、当時メディアをにぎわせたこの事件は、本作でも言及されている。次男の茂之があえて偏差値の低い高校を選ぼうとしていることに不満を抱いている父の孝助が、その矛先を母の千賀子に向けるシーンだ。

「やっぱりお前じゃダメなんだよ。甘やかして」
「それならお父さんが言ってくださいよ」
「おれがあんまり深入りするとバット殺人が起こるんだよ。そんなことは分かってるから、お前や家庭教師に代理させてるんじゃないか」

 家族同士のコミュニケーションの断絶と自己保身ー。このシーンほど、1980年代の家族内問題をはっきりと表現した場面はないだろう。

 本作は『の・ようなもの』(1981)や『阿修羅のごとく』(2003)で知られる名匠・森田芳光によるヒューマンドラマ。原作は本間洋平の同名小説で、家庭教師・吉本勝を松田優作が演じている。

 本作を語る上で欠かせないのが、オープニングとエンディングで登場する食事のシーンだ。家族の食事シーンといえば、アニメ『サザエさん』(フジテレビ系列)のように食卓を囲んで一緒にご飯を食べるというイメージを抱かれることが多いだろう。しかし、本作の食事シーンでは、カメラに対して皆が横向きになり、シーンによってはそれぞれがバラバラに食事をとっている。文字通り、誰1人として互いに「向き合っていない」のだ。

 こういったシーンは、本作のあちこちに散りばめられている。例えば、先の孝助と千賀子の会話シーンでも、2人は直角に座ってまるで独り言のように会話を交わしている。こういった描写は、スタイリッシュなカメラワークもあいまって、恐ろしく冷たい印象を観客に与えている。

 さて、令和の今日、本作に描かれたような家族像は完全に陳腐化し、瓦解してしまったように思える。代わりに取り沙汰される言葉が、「毒親」や「親ガチャ」という言葉だ。今や、育てられるべきは子どもではなく、親の方なのだ。

 そこで提案したいのが、『家族逆転ゲーム』だ。この令和版の『家族ゲーム』では、自力で東大を卒業したエリート息子が、仕事の傍ら親の世話をする。食卓シーンでは、子どもと親が「ねじれの位置」にあり、息子にすがりつく親に対して、息子の方がそっぽを向いている。

 なお、ご存知の方もいらっしゃるだろうが、本作は2013年に嵐の櫻井翔主演でドラマ化されている。このドラマバージョンも、本作のリブートの一つの答えだろう。機会があればぜひご覧いただきたい。

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