民放ドラマで“主役を食った俳優”は? 歴史に残る名演技(4)視聴者騒然…ドラマ史に残る殺人鬼を演じたのは?
ドラマが名作足り得る条件の1つに、主人公だけでなく脇役にも魅力があることが挙げられるだろう。中には、主人公を食ってしまうほどの存在感を放ち、ドラマ終了後も視聴者の脳裏に存在を刻みつける存在も少なくない。今回は過去に放送された民放ドラマで、最も異彩を放った名脇役5人をセレクト。作品の魅力とともに紹介する。(文・寺島武志)
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一人二役のシリアルキラー
池松壮亮の「代表作」と本人も公言
『MOZU』池松壮亮(新谷和彦役)
放送期間:2014年4月10日~6月12日
放送時間:木曜日21:00~21:54
放送局:TBS系
脚本:仁志光佑
原作:逢坂剛
最高視聴率:13.8%
キャスト:西島秀俊、香川照之、真木よう子、伊藤淳史、長谷川博己、石田ゆり子、小日向文世、長谷川博己、石田ゆり子、堀内敬子、杉咲花
【作品内容】
東京都内で起きた爆弾による爆破事件によって妻・千尋(石田ゆり子)を亡くした警視庁公安部捜査官の倉木尚武(西島秀俊)。
妻の死の真相を暴くため、倉木は公安への反感を隠さない警視庁捜査一課の刑事・大杉良太(香川照之)、事件現場に居合わせた公安部捜査官・明星美希(真木よう子)らを巻き込みながら苛烈な捜査を進めていく。
【注目ポイント】
逢坂剛の小説『百舌の叫ぶ夜』『幻の翼』を原作とし、西島秀俊主演で、TBSとWOWOWの共同制作という布陣でおくる刑事ドラマ。『Season1~〜百舌の叫ぶ夜〜』(2014)、『Season2~幻の翼~』(2014)、『劇場版 MOZU』(2015)が制作され、またスピンオフドラマも存在している。
Season1、Season2、さらに劇場版と、物語が進むに連れ、人間関係が複雑化し、難解なストーリーとなっていく本作だが、中でも、強烈な印象を残したのが、双子の兄弟、新谷和彦・宏美を演じ分けた池松壮亮だろう。
物語序盤、池松演じる新谷宏美は記憶喪失の状態で発見されるが、その正体は「百舌」と名乗るプロの殺し屋であり、第6話にして殺人鬼として覚醒。生まれ持った殺人衝動を抱え、昂ぶった時は自分の手を噛んで抑える。またその殺害方法はアイスピックや千枚通しで相手の頸椎を刺すというサイコキラーぶり。その衝撃は、メインストーリーを一瞬、忘れさせてしまうほどだ。
池松は当時、日大藝術学部映画学科監督コースを卒業したばかりの23歳にして、この難役に挑んだ形となったが、子役として既に俳優活動していたこともあり、演技経験は豊富だった。
『MOZU』では、期待を超える演技を披露。表情を全く変えず淡々と殺人を続ける姿は世を震撼させた。池松自身も“ハマり役”と自称し、「『MOZU』があったからこそ、今の自分がある」とキャリアに影響を与えた作品であることを強調している。また、俳優業に対し、迷いがあった大学時代は監督業を専攻していたが、本作を機に、俳優を続けていく自信が付いたとも語っている。
現在ではドラマ、映画で八面六臂の活躍を見せている池松だが、若くして得たこのキャラクターが、彼の役柄の幅広さを作り上げたといっても過言ではないだろう。
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