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「今までにない役を演じるチャンスを望んでいた」映画『歩女』主演・黒沢あすか単独インタビュー。女優としての新境地を語る

text by 福田桃奈

特殊メイクアップアーティストの梅沢壮一監督の最新作、映画『歩女』が8月3日(土)より公開となる。今回は、梅沢監督の妻であり、本作で主演を務めた黒沢あすかさんに独占インタビューを敢行。1つ1つの質問に丁寧に答えてくださり、本作の裏話から、演じることについて真摯に語っていただいた。(取材・文:福田桃奈)

「とてもやりがいを感じました」女優・黒沢あすか新たな挑戦

写真:浜瀬将樹

写真:浜瀬将樹

―――ホラーでありながら、コミカルでもあり、そして終始作品に流れるシュールさに妙に心奪われ、とても引き込まれる作品でした。今回あすかさんは、交通事故で記憶の一部を失い、慎ましく生きる女性・ユリを演じられています。最初に脚本を読んだ感想はいかがでしたか?

「感情の起伏が激しくなく、凪を保ちながら演じられるっていうことに、とてもやりがいを感じました。こういう役に挑戦できる機会があまり今までなかったので、『私にもその道を開くことができるのかな? できるよ、大丈夫』と自分に言い聞かせました」

―――兼ねてよりこういう役柄を演じたいと思われていたと。

「そうです。エキセントリックな女性を演じてきて、そうではない自分もいるのですが、やっぱり築いてきた土壌がそうさせている現実がある。もちろん気性が荒い役を演じるのは楽しいですが、50を過ぎたことをきっかけに、今までにない役を演じるチャンスを望んでいたので、それもお母さんではなく生きることに注視している1人の女性。ぜひ私もユリの背中を追ってみたいなと思いました」

―――今まであすかさんが演じてこられた役柄といえば、どちらかというと豪快な女性のイメージだったので、今回は新たな一面を見ることができ、とても新鮮でした。

「それは良かったです! 私は自作を観る度に反省をするのですが、今までは凪を保つ役柄とは程遠い位置にいた役者なので、まだまだ学びが必要だなと痛感しました」

―――役作りはいかがでしたか?

「ユリは少しでも動作を大きくするとやり過ぎに見えてしまうと思ったので、言葉に抑揚を付けずに会話することを心がけました。

近年、自分という人間について気づいたことがありまして。それは、画面に映ると、何もしてなくても何かをしているように見えるということです。そうした気づきもあって、今回は削ぎ落とすことが大事だと思い、変な作り込みはしないでおこうと思いました。

そのためにはとにかくセリフを馴染ませておくが大事になります。本作の場合は、今まで以上にやらなければ、セリフに馴染めていない感じや、勉強不足だと感じる部分からは抜け出せないと思ったので、役づくりの作業にはかなり時間をかけました」

―――セリフを馴染ませる作業は具体的にはどんなことをしますか?

「まずは台本をただ読むということ。そうすると次第にセリフが浮き出てきて、自然とリズムが生まれてくるんです。まずそこに至るまでに時間がかかります。そこから台本を外して、思い出す作業を何度も繰り返す。その次に、日常生活の中で、パッとセリフが頭に浮かんだら、それ以降のセリフを空で言うようにする。そうすると次第に突っかからずに言えるようになるので、その段階になるまでひたすらやりました」

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