今、最も演技が上手い40代俳優は? 日本を代表する名優(1)文句なしで最強…現役トップレベルの役者とは?
役者にとって40代は、才能と経験が絶妙なバランスで釣り合う、まさに黄金期。現在高く評価されているベテラン俳優の中には、黄金期を迎えるまでの若手時代、辛酸をなめてきた者も少なくない。そこで今回は、今最も演技が上手い40代の俳優を5人セレクトし、キャリアを振り返りつつ、おすすめの出演作を紹介する。(文・野原まりこ)
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現役トップレベルの“カメレオン俳優”
鈴木亮平
【注目ポイント】
キャラクターを憑依させ、役によってイメージを劇的に変化させる。“カメレオン俳優”という異名を持つ俳優は少なくないが、中でも、役によって体重を増減させ、身のこなしから声色と、細部に至るまでキャラクターを憑依させてしまう鈴木亮平は、そのトップレベルに位置する俳優であると言っても過言ではないだろう。
肉体改造にまつわるエピソードばかり注目してしまいがちだが、映画化もされスマッシュヒットを飛ばしたドラマ『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS系、2021)では救命救急医に扮し、難解な医学用語(メディカルターム) をワンカットの中で淀みなく発することで芝居に説得力を持たせてみせた。
卓抜した演技力もさることながら、近年はヒット請負人としても注目を集めている。劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』は興行収入45億円を超える大ヒットを記録。Netflixオリジナル映画『シティーハンター』は、配信開始1週目に「週間グローバルTOP10(非英語映画)」で1位を獲得するなど、主演作の打率の高さが目立つ。
一方で、後述する映画『エゴイスト』(2022)をはじめとした小中規模の作品でも存在感を発揮している点も特筆すべきだろう。
今でこそ第一線で活躍する鈴木だが、俳優を志していた当初は50社以上の芸能事務所に自ら履歴書を持ち込むも、門前払いを食らうなど、決して順風満帆な俳優人生を歩んできたわけではない。しかし、下積み時代は確実に芸の肥やしとなり、強靭な精神力を育むことに寄与したに違いない。鈴木の芝居に安定感があるのは、苦労を重ねた分、人としての年輪が感じられるからだろう。
最近では、バラエティ番組で「韓国に20年くらい差を開けられた」と日本のエンタメ業界の現状を憂いつつ、今後に向けた提言を発して注目を集めた鈴木。今後は、俳優としてのみならず、企画・プロデュースといった仕掛け側としての活躍も期待される。
鈴木亮平の演技を堪能するためのお勧めの一本
『エゴイスト』(2022)
これまで『変態仮面』(2013)や『俺物語!!』(2015)などで、エキセントリックな役をこなしてきた鈴木亮平だが、本作ではまた新たな挑戦が見られる。
エッセイストである高山真の自伝的小説を基にした本作で、鈴木はファッション雑誌の編集者でゲイの斉藤浩輔を演じる。浩輔は、宮沢氷魚演じるパーソナルトレーナーの中村龍太と出会い恋に落ちるが、龍太は様々な問題を抱えていた。
生々しくリアルな質感で紡がれる会話と、手持ちカメラで撮影された迫真の映像は、ドキュメンタリーのような手触りだ。それもそのはず、本作の一部のシーンではエチュード(即興芝居)で構成されており、観る者は思わず、鈴木演じる浩輔の日常を覗き見ているような感覚に陥るだろう。
本作における鈴木の芝居は高く評価され、第78回毎日映画コンクールでは男優主演賞、第47回日本アカデミー賞では、優秀主演男優賞を受賞した。
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