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謎めいたラストの解釈は? 映画『ザ・ウォッチャーズ』考察レビュー。イシャナ・ナイト・シャマランの初長編を読み解く【中編】

text by 冨塚亮平

M・ナイト・シャマランの娘であるイシャナ・ナイト・シャマランによる長編初監督作品『ザ・ウォッチャーズ』のレビューを全3編でお届けする。原作は作家A・Mシャインの同名ホラー小説。中編では、スリラーからファンタジーに舵を切る終盤の展開とラストについて解説する。(文・冨塚亮平)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】

※原作「The Watchers」からの引用部分は、括弧内にページ数を明記する。
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【著者プロフィール:冨塚亮平】

アメリカ文学/文化研究。神奈川大学外国語学部准教授。ユリイカ、キネマ旬報、図書新聞、新潮、精神看護、ジャーロ、フィルカル、三田評論、「ケリー・ライカートの映画たち漂流のアメリカ」プログラムなどに寄稿。近著に共編著『ドライブ・マイ・カー』論』(慶應大学出版会)、共著『アメリカ文学と大統領 文学史と文化史』(南雲堂)、『ダルデンヌ兄弟 社会をまなざす映画作家』(neoneo 編集室)。

入れ子状の空間で

©2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
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 さて、ミナは当初は鳥かごの内部でも、母の命を奪ったトラウマ的状況を再現するように、ルールを守らず、悪意から模倣を行う。一方で彼女が真似るのは、室内に用意されたレコードと並ぶほぼ唯一の娯楽、恋愛リアリティショー「Lair of Love」のDVDに登場するバカバカしいセリフだ。

 この番組は、イシャナもインタビューで明言する通り、イギリスで2005年にスタートして以来人気となり各国にフォーマットが輸出されたリアリティショー、『ラブ・アイランド』のパロディである。ある室内に閉じ込められた男女は、愛を見つければ外に出ることができる。だが、それまでは部屋での生活を視聴者に監視され続ける。

 原作には、鳥かごに入って間もない頃のミナが、ウォッチャーズが自分たちを覗き見ている状況をリアリティショーの視聴者と出演者の関係に喩えて想像する場面がある(65)。対して映画は、想像にとどまらず実際にミナらがリアリティ番組を視聴する状況を作り、さらにミナに出演者を模倣させることで、鳥かごを文字通りの入れ子状の空間とする。

 ウォッチャーズは鳥かごで過ごすミナらを、ミナらは密室で過ごすテレビ番組の出演者たちを、それぞれ一方的に覗き見る。そして物語が進むにつれ、番組の出演者を模倣していたミナと同様に、ウォッチャーズもまた、ミナらを模倣しようとしていたことが明らかになる。

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