“夏の終わりに観たい映画”の最高傑作は? 永久不滅の名作(3)珠玉の名セリフにしびれる…アジアが誇る逸品
今年の夏は例年よりもさらに暑く感じる。外に出て、海やプールに入ったりして涼しむのもいいが、クーラーの効いた家や映画館でゆっくり映画を観るのもいいだろう。今回は、暑い夏にピッタリな映画5本をセレクト。ノスタルジックな雰囲気の作品や、甘酸っぱい作品を紹介する。(文・シモ(下嶋恵樹))
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【著者プロフィール:シモ(下嶋恵樹)】
東京都出身。横浜市在住。転職5回のサラリーマン生活を経て、フリーランスのライターに。地域情報サイトでの取材記事や映画サイトでの映画紹介記事、ビジネス系記事など、さまざまな執筆の経験あり。現在は、インタビュー記事などにも挑戦中。映画は幅広い国の映画を鑑賞。好きな映画は、『ニュー・シネマパラダイス』『イル・ポスティーノ』『パリ・テキサス』。
スタイリッシュな映像と詩的なセリフにクラクラする
『欲望の翼』(1990)
製作国:香港
上映時間:97分
監督:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ
出演者:レスリー・チャン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、トニー・レオン
【作品内容】
実の親の愛を知らないヨディ(レスリー・チャン)は、その寂しさゆえか刹那的な人生を歩んでいる。
1960年4月16日、香港の暑い夜。彼は、サッカー場の売り子をしているスー(マギー・チャン)を気に入り、恋仲になる。しかし、縛られることを嫌がるヨディは彼女のもとを去り、今度はナイトクラブのダンサー・ミミ(カリーナ・ラウ)と一夜をともにするのだが…。
【注目ポイント】
本作は、『恋する惑星』(1994)、『ブエノスアイレス』(1997)などで知られるウォン・カーウァイの監督2作目にして、世界的な注目を集めるきっかけとなった映画である。
1960年の香港に暮らす5人の若者たちの青春群像劇である。個人的に注目したいのは、主人公のヨディが言う詩的なセリフの数々だ。
「脚のない鳥がいるそうだ。ただ飛び続けて疲れたら風に乗って眠る。地上に降りるのは、死ぬときだけだ」
「4月16日 3時1分前 君は僕といた。この1分を忘れない」
「誰を愛したかなんて忘れたよ。死ぬまでこんな調子さ。」
「最後に見るものが何か知りたい。だから目は閉じない」
これらの言葉の数々が、スタイリッシュな映像とともに、この作品を強烈に印象付けている。オープニングや劇中、ラストで流れるロス・インディオス・タバハラスの曲「Always In My Heart」のギターの音色も印象深い。カーウァイが敬愛する村上春樹の小説からの影響も無視できないだろう。
カーウァイの夏映画といえば、1994年公開の『恋する惑星』のほうが知名度は高いが、湿度の高い日本の夏には、登場人物の汗と熱気を丹念に捉えた本作がふさわしいように思える。
レスリー・チャン、トニー・レオン、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、マギー・チャン、カリーナ・ラウなど、当時の香港映画界のオールスターキャストとも言うべき配役にも注目だ。
(文・シモ(下嶋恵樹))
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