なぜ野木亜紀子の書く物語は現実とリンクするのか? 新作『ラストマイル』にて再集結を果たす、過去作の魅力を徹底考察&解説
text by 苫とり子
監督・塚原あゆ子×脚本・野木亜紀子による映画『ラストマイル』が公開前から話題を呼んでいる。本作は、ドラマ『アンナチュラル』『MIU404』と世界観を共通しており、野木亜紀子はその他にも数々の良質な作品を世に送り届けてきた。今回は、最新作『ラストマイル』に備えて、野木亜紀子の脚本の魅力を紐解いていきたい。(文・苫とり子)
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
公開前から話題沸騰の『ラストマイル』がいよいよ公開
野木亜紀子脚本の魅力に迫る
今や日本にも浸透したアメリカ発祥のセールイベント“ブラックフライデー”の前夜、大手ショッピングサイトから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。やがてそれは日本中を恐怖に陥れる謎の連続爆破事件に発展していくーー。
大手ショッピングサイトの関東センターで働く舟渡エレナ(満島ひかり)と梨本孔(岡田将生)のコンビが未曾有の危機に立ち向かう映画『ラストマイル』がついに封を切った。
筆者は公開当日のチケットをいち早く購入したが、すでに座席は満席状態。なぜこんなにも公開前から盛り上がりを見せているかと言えば、監督・塚原あゆ子×脚本・野木亜紀子の最強タッグによるドラマ『アンナチュラル』、『MIU404』とのシェアード・ユニバース作品だからだ。
2018年1月期に放送された『アンナチュラル』(TBS系)は、死因究明のスペシャリストが集まる架空の研究機関“UIDラボ”を舞台に、石原さとみ演じる法医解剖医の三澄ミコトと仲間たちが、不自然な死の謎を解いていく法医学ミステリー。
『空飛ぶ広報室』(TBS系、2013)や『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系、2016)など原作モノでヒットを打ち出した野木のオリジナル脚本とあって放送前から注目はしていたが、第1話を視聴した時の衝撃は今でも忘れられない。初回にもかかわらず、これは何十年も語り継がれるドラマになると確信するほどの出来栄えだった。