史上最も呪われた映画は? 悲惨なトラブルに見舞われた邦画(1)刃が首に刺さり即死…芸能史に残る惨事とは?
近年、映画撮影中の悲惨な事故が度々ニュースで報じられる。特に昭和時代には日本国内でも、壮絶な撮影現場が多く存在した。今回は、制作中に悲惨なトラブルに見舞われた「呪われた映画」を5本セレクトする。有名俳優の大怪我や、時には死亡事故にまで至ったケースなど、その背景と事故の詳細を振り返りながら紹介する。(文・阿部早苗)
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【著者プロフィール:阿部早苗】
神奈川県横浜市出身、仙台在住。自身の幼少期を綴ったエッセイをきっかけにライターデビュー。東日本大震災時の企業活動記事、プレママ向けフリーペーパー、福祉関連記事、GYAOトレンドニュース、洋画専門サイト、地元グルメライターの経験を経て現在はWEB媒体のニュースライターを担当。好きな映画ジャンルは、洋画邦画問わず、社会派、サスペンス、実話映画が中心。
「真剣」が頸動脈に刺さり出演者が死亡する大惨事
『座頭市』(1989)
上映時間:116分
監督:勝新太郎
原作:子母沢寛
脚本:勝新太郎、中村努、市山達巳、中岡京平
キャスト:勝新太郎、奥村雄大、樋口可南子、田武謙三、蟹江敬三、川谷拓三、片岡鶴太郎、安岡力也、内田裕也、緒形拳
【作品内容】
盲目のあんま師・座頭市(勝新太郎)は、知り合いを頼ってとある海辺の村に来た。その村では極道の五右衛門一家が賭博を開いている。跡継ぎの若き五右衛門は大親分を殺害し、村の権力を持つ八州取締役に取り入るのだが…。
【注目ポイント】
名優勝新太郎の代表作であり、その後はビートたけしや香取慎吾、綾瀬はるかが演じた「座頭市」。特に、勝新太郎版は1962年に公開されて以来映画26作品、テレビシリーズ4作品、舞台3作品が公開され、世間の話題をかっさらってきた。
しかし、そんな輝かしい歴史が一気に吹き飛んでしまうような事件が1989年に発生する。監督と主演を務めた勝新太郎の長男であり、本作のメインキャストの1人、奥村雄大(のちに鴈龍と改名)が、真剣で斬られ役の俳優を斬りつけてしまったのだ、
なお、斬られ役の俳優は、頸動脈切断によりその場で死亡。奥村は業務上過失致死の疑いで事情聴取を受けることになる。
なぜ奥村に真剣が渡されたのか―。この謎は、さまざまな憶測を呼んだが、最終的にスタッフがインパクトを出すために模造刀を真剣に変えていたことが判明。奥村は、真剣だったことを知らなかったという理由から無罪となり、その後謹慎生活を送ることになる。
なお、本作は、事故の影響を受けながらも、1月18日後にクランクアップ。その後、2週間余り経った2月4日にスピード公開され、皮肉にもシリーズ最高の観客動員数を叩き出すことになる。
本作はその後、続編の計画が持ち上がるものの、勝のコカイン所持や相次ぐトラブルから頓挫。本作が勝新太郎による最後の作品になってしまった。
勝といえば、1990年にコカイン所持の現行犯で逮捕され、その後「気付いたら入っていた」「今後は同様の事件を起こさないよう、もうパンツをはかないようにする」「なぜ、私どもの手にコカインがあったのか知りたい」と報道陣を前に大見えを切った姿が印象的だ。
愛され続けた昭和の名俳優は、数多くの伝説を遺し、旅立っていった。
(文・阿部早苗)
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