“原爆裁判”異例の4分半の神演出とは? 屈指の名シーンを深掘り解説。NHK朝ドラ『虎に翼』解説&感想レビュー
text by あまのさき
伊藤沙莉主演のNHK朝ドラ『虎に翼』。本作は、昭和初期の男尊女卑に真っ向から立ち向かい、日本初の女性弁護士、そして判事になった人物の情熱あふれる姿を描く。「始めは処女の如く、後は脱兎の如し?」と題した第23週では、8年にもわたった”原爆裁判”の判決が出る…。【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
8年にもわたった原爆裁判の判決
“原爆裁判”に向き合う寅子(伊藤沙莉)の奮闘を描いた『虎に翼』第23週。「始めは処女の如く、後は脱兎の如し?」と題された1週間を振り返る。
4年にわたる準備手続きが終わり、いざ裁判がはじめられるというとき、雲野(塚地武雅)が急死してしまう。志半ばも半ば。さぞ悔しかったことだろう。轟(戸塚純貴)によって寅子にも報せが入るが、よね(土居志央梨)から「葬儀には来るな」と告げられる。
これからはじまる裁判にとってはもちろん賢明な判断だと頭ではわかっても、やっぱり悲しい。
頭ではわかっていても。これは原爆裁判に裁判官として携わるうえでも、寅子の感じていることだった。被爆者の補償を国がすることは法的に考えて難しい。明らかに被害者であるにもかかわらず、誰からも何からも補償されない。
着々と進んでいく裁判のなかで、寅子は証言台に立った法学者に「今苦しんでいる人は誰に助けを求めればいいのか?」と質問を投げかける。これを見出しに冠した記者の竹中(高橋努)が書いたルポルタージュをきっかけに、裁判への注目が高まっていく。
自分に何ができるのか、と頭を悩ませる寅子に対し、桂場(松山ケンイチ)は司法に何ができるかを考えるよう声をかける。