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実話を基にした“泣ける邦画”の決定版は? 心震える感動作(2)感動のエンディング…日本の悲劇を描いた佳作

text by 阿部早苗

「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、現実に起きた出来事は、時に、精巧に作られたフィクションよりも深い感動をもたらし、観客の胸を打つ。今回は、実話を基にした心が温まる日本映画を5本セレクト。疲れた心にそっと寄り添ってくれる、珠玉の作品をセレクトした。(文・阿部早苗)

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【著者プロフィール:阿部早苗】

神奈川県横浜市出身、仙台在住。自身の幼少期を綴ったエッセイをきっかけにライターデビュー。東日本大震災時の企業活動記事、プレママ向けフリーペーパー、福祉関連記事、GYAOトレンドニュース、洋画専門サイト、地元グルメライターの経験を経て現在はWEB媒体のニュースライターを担当。好きな映画ジャンルは、洋画邦画問わず、社会派、サスペンス、実話映画が中心。

エンドロールまで目が離せない

『浅田家!』(2020)

二宮和也
二宮和也Getty Images

上映時間:127分
監督:中野量太
脚本:中野量太、菅野友恵
出演者:二宮和也、黒木華、菅田将暉、風吹ジュン、平田満、渡辺真起子、北村有起哉、野波麻帆、駿河太郎、池谷のぶえ、松澤匠、篠原ゆき子、後藤由依良、妻夫木聡

【作品内容】

 父親の影響で、子供の頃から写真を撮ることが大好きな政志(二宮和也)は、写真家の道を歩んでいた。家族写真の撮影依頼を受け全国各地をまわっているなか、2011年3月11日に東日本大震災が発生する。

【注目ポイント】

 東日本大震災を題材にした作品は、これまで『Fukushima50』(2020)『風の電話』(2020)など実在の人物や場所をモチーフにした作品が多い。本作もその中の1つ。1979年生まれの写真家・浅田政志の半生を描いている。浅田は「家族写真」をテーマに、実際の家族を被写体にしたユニークな作風で知られている。早速映画の内容を見ていこう。

 浅田家の次男・政志(二宮和也)は、カメラが好きな父親の影響で幼少期から写真に興味を持ちはじめる。写真専門学校を卒業後、自由気ままな生活を送り、再び写真家の道を歩みだすも上手くいかない。

 そんな矢先、家族それぞれが、消防士やレーサーなど「なりたかった職業」の姿に扮した写真を撮影し、写真集を出版。それが「写真界の芥川賞」と名高い木村伊兵衛写真賞を受賞する。これをきっかけに、政志は全国から家族写真の撮影依頼を受けるようになる。

 家族写真の依頼主の中には、岩手県野津町に住む家族もいた。そして2011年3月11日、東日本大震災が発生する。政志は野津町の家族が気になり現地に向かう。そこで目にしたのは家の原形をとどめていない瓦礫の山だった。

 家族の情報を探すため、役場を訪れた彼は家を失った多くの人たちや、行方不明の家族を探す人、家族を失った人たちを目の当たりにする。

 そこで政志は、泥だらけになった写真を洗う小野(菅田将暉)と出会う。瓦礫から見つかったアルバムを回収しながら、持ち主を探す小野を通して、政志は写真の重要さに気づく。写真は二度と戻らない瞬間が収められている。どんな写真であっても、写っている人物や風景の物語を語っている。コミカルなシーンに事欠かない本作だが、写真というメディアの本質をそっと伝えつつ観客を感動の渦に巻き込む、見応えのある作品となっている。

 エンドロールでは、実際の浅田家が様々なシチュエーションで撮影した写真が流れるので、最後まで注目していただきたい。

(文・阿部早苗)

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