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どうでもいい会話が笑えるワケとは? 『映画 THE3名様Ω これってフツーに事件じゃね?!』のユルい魅力を徹底解説&評価

text by ZAKKY

佐藤隆太、岡田義徳、塚本高史の3人が深夜のファミレスで繰り広げる日常を描いた『映画 THE3名様Ω これってフツーに事件じゃね?!』が公開中だ。ちょっとした事件を通して、観る者に笑いと共感を届ける本作。そんなユルい笑いを楽しむための魅力やポイントを徹底解説する。(文・ZAKKY)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】

「やつらが帰ってきた!」

『映画 THE3名様Ω これってフツーに事件じゃね?!』

Ⓒ2024「THE3名様Ω」Partners ⒸMakochin Ishihara

 

 『ビッグコミックスピリッツ』誌上にて、2000年に初掲載した『THE 3名様』は、2005年に、佐藤隆太(ジャンボ)、岡田義徳(まっつん)、塚本高史(ミッキー)の3人で実写化している。

 物語は『未知との遭遇』(1977)のテーマで始まり、地球に隕石が落ちてくるという壮大なオープニングからスタートする。

 場面は一転し、ファミレスBig Boyでは、いつもの3名様がしゃべっている。窓越しに「隕石の落下だと思われる物体」を目撃した彼らは、探し当てればオークションで1億円で売れたという海外のニュースを思い出し、「今から行こう!」となる。ここまでであれば『スタンド・バイ・ミー』(1986)や『グーニーズ』(1985)的な冒険譚のワクワク感を彷彿とさせる。…が、その後の展開は、さすが、『THE 3名様』だ。

 窓越しに「隕石の落下物」を目撃した彼らは、隕石がオークションに出品され、1億円で売れたことを報じる海外のニュースを思い出し、「今から行こう!」と盛り上がる。この時点では、『スタンド・バイ・ミー』や『グーニーズ』のような冒険物語を連想させる展開だが、そこはさすが『THE 3名様』なのだ。

 まっつんがスマホで隕石の墜落地点がファミレスから5kmほど離れていると調べると、ミッキーは面倒くさがり、ジャンボだけが「この3人でビッグドリームを掴みたい!」と意気込む。

 その間にSNSで隕石の話題がを知り、3人は「これは事件だ!」と店を飛び出す。しかし、この話はそこまで。おそらく、3人とも途中で飽き、隕石のことなど忘れて帰宅したのだろう。「これから大冒険が始まるんじゃないのか!」とツッコミたくなる肩透かしな展開だが、この3人を見ていると、なぜか安心感が沸いてくるのだ。

 しかし、この安心感の正体はなんだろう。実年齢は作中で明らかにされていないが、中年になっても、3人が織りなす会話の内容、テンションは2005年のスタート時から一切変わっていない。

 少しイキっているミッキー、冷静でありながらも独特な雰囲気を持つまっつん、そして純粋無垢なリーダー格のジャンボ。彼らの座り位置にも注目してほしい。ミッキーが一人で画面右の座席、まっつんとジャンボが左の座席に並んで座る。

 この構図こそ『THE 3名様』の特徴。古参ファンは「やつらが帰ってきた!」という懐かしさで涙腺を刺激されるのではないだろうか。

 原作漫画もこれまでの映像化作品も、どこから見ても自然と楽しめて笑える。これは、原作者の石原まこちん先生と俳優陣たちの絶妙な掛け合いによるものであり、これこそが実写版『THE 3名様』の魅力だと言えるだろう。

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