映画への愛はあるけど…シリーズファンが首をかしげたワケ『エイリアン:ロムルス』徹底考察&評価【映画と本のモンタージュ】
映画『エイリアン』(1978)のその後を描いた映画『エイリアン:ロムルス』が現在公開中だ。監督を務めたのはフェデ・アルバレス。エイリアンシリーズへのリスペクトに溢れた「原点回帰」となる本作。今回は、本作の魅力に迫るレビューと併せて、エイリアンユニバースへの理解が深まる3冊の書籍を紹介する。(文・すずきたけし)
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【著者・すずきたけし プロフィール】
ライター。『本の雑誌』、文春オンライン、ダ・ヴィンチweb、リアルサウンドブックにブックレビューやインタビューを寄稿。元書店員。書店と併設のミニシアターの運営などを経て現在に至る。
監督交代の意味と期待
『エイリアン:ロムルス』を観た。
1作目である『エイリアン』(1979)は子供の頃に地上波で放送されたのを自宅の14インチのテレビで観た。恐ろしい映画だった。コタツにもぐりこみ震えながら布団の隙間からテレビを覗くようにして観ていたことをいまでも憶えている。
以来、シリーズ作品が公開されると必ず劇場に観に行き、またエイリアンシリーズの関連コンテンツは逐一チェックするようになった。
本作の舞台は西暦2142年頃、宇宙一のブラック企業ウェイランド・ユタニによる採掘が行われている惑星ジャクソンだ。
採掘作業に従事しているレインはこの惑星から仲間4人とともに遠く彼方の星へ逃げようと宇宙船で脱出。途中で長距離航行のためのハイパースリープマシンを手にするため宇宙ステーション「ロムルス」に立ち寄るが、そこはある実験施設であった…というストーリーとなっている。
本作は、第1作から約20年後であり、タイムラインとして『エイリアン2』(1986)よりも前の物語である。監督を務めたのは、『ドント・ブリーズ』(2016)のフェデ・アルバレスだ。
実は、公開前は監督がリドリー・スコットでないことで作品への期待はかなりあった。なぜなら『エイリアン』シリーズは、当時の新進監督によって作品のルックを大きく変えながら作られ続けてきたシリーズだからだ。
リドリー・スコットの『エイリアン』に始まり、『エイリアン2』はジェームズ・キャメロン、『エイリアン3』(1992)はデヴィッド・フィンチャー(初監督作)、『エイリアン4』(1998)はジャン=ピエール・ジュネといった今では名監督と呼ばれる名前が本シリーズには連なっている。
上記の4本を見比べれば各監督の作家性に溢れた作品であることがわかるだろう。だからこそ『ドント・ブリーズ』のあの緊張感と生理的キモさを描いたフェデ・アルバレス監督には大いに期待したのだった。