ホーム » 投稿 » コラム » 日本映画 » 日本映画史上、最も切ないラストは? ほろ苦い結末の邦画5選。モヤモヤするけどクセになる…珠玉の名作をセレクト

日本映画史上、最も切ないラストは? ほろ苦い結末の邦画5選。モヤモヤするけどクセになる…珠玉の名作をセレクト

text by シモ

ギリシャの哲学者アリストテレスは、魂を浄化する「カタルシス」の条件として、「怖れ」と「憐れみ」の感情が必要だと述べている。つまり、精神の浄化には、ハッピーな展開ではなく、バッドな展開を観ることが必須なのだ。そこで今回は、ほろ苦い結末を迎える日本映画5本をセレクト。心を浄化してくれる作品を紹介する。(文・シモ(下嶋恵樹))

ーーーーーーーーーーー

【著者プロフィール:シモ(下嶋恵樹)】

東京都出身。横浜市在住。転職5回のサラリーマン生活を経て、フリーランスのライターに。地域情報サイトでの取材記事や映画サイトでの映画紹介記事、ビジネス系記事など、さまざまな執筆の経験あり。現在は、インタビュー記事などにも挑戦中。映画は幅広い国の映画を鑑賞。好きな映画は、『ニュー・シネマパラダイス』『イル・ポスティーノ』『パリ・テキサス』。

純愛の切なさだけが詰まった恋愛映画

『ジョゼと虎と魚たち』(2003)

妻夫木聡
妻夫木聡【Getty Images】

原作:田辺聖子
監督:犬童一心
脚本:渡辺あや
出演:妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、新井浩文、新屋英子

【作品内容】

 平凡な大学生・恒夫(妻夫木聡)は、麻雀店でアルバイトをしながら細々と生計を立てていた。

 そんなある日。犬を散歩している彼の元に、ベビーカーに乗せられた少女・ジョゼ(池脇千鶴)が現われる。包丁を振り回す彼女にびっくりする恒夫だが、彼女と交流するうちに次第に魅かれるようになる。

【注目ポイント】

 本作は、田辺聖子の同名小説を実写化した作品。監督は『メゾン・ド・ヒミコ』(2005)の犬童一心で、障がいを持つ女性ジョゼと恒夫の恋愛模様を描いている。

 誰とでも関係を持ってしまうような、やや浮ついた大学生活を送っていた恒夫。彼ははじめ、興味本位でジョゼの家に出入りしていたが、一緒に過ごすうちに次第に恋愛感情が芽生える。同じくジョゼも恒夫を大切な存在と思うようになり、2人の関係はかけがえのないものに変わっていく。

 恒夫はある日、身体が不自由なジョゼに外の世界を見せたいという思いから、彼女をドライブに連れ出し、動物園に行ったり、海に行ったりと、2人だけの思い出を作る。しかし、やがて2人は別れてしまう。

 その後、大学生の同級生・香苗(上野樹里)と付き合い始めた恒夫は、なにげない会話の最中に突然泣き崩れる。障がいのあるジョゼから逃げ出した自分の情けなさと、彼女を振ったことへの後悔が堰を切ってあふれ出したのだろう。

 しかし、ジョゼはというと、何事もなかったかのように日常に戻り、家で魚を焼いていた。恒夫のほろ苦い感情と、淡々と前を向くジョゼの力強さ―。2人の心持ちの対比で物語は幕を下ろす。

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!