実話が超怖い…実在の事件をモデルにしたと噂の日本のドラマ(2)過激な暴力にクレーム殺到…歴史に残る大問題作
毎年およそ100本も制作されている日本のドラマ。これまで制作されたものの中には、目を覆いたくなるような事件や凶悪犯罪をモデルとしたものも少なくない。というわけで、今回は、実際に起きた事件をモデルにしている日本のドラマを5本紹介。ストーリーと共に実話の内容も解説する。第2回。(文・編集部)
『聖者の行進』(1998)→水戸事件
放送期間:1998年1月9日~3月27日
脚本:野島伸司
キャスト:いしだ壱成、酒井法子、広末涼子、安藤政信、松本恵、雛形あきこ、渡辺慶、小林正寛、水沢アキ、デビット伊東、石橋保、斉藤洋介、段田安則、いかりや長介
【作品内容】
とある地方都市。町工場である村上製作所では、純粋な心を持つ知的障がい者たちが働いていた。しかし、社長である光輔の目的は、障がい者雇用で助成金を得るというもので、工員には日常的に暴力や性的虐待を働いていた。そんなある日、この町工場に、生まれながらに知的障がいを負った町田永遠が就職してくる。
【注目ポイント】
『101回目のプロポーズ』(1991、フジテレビ系)や『ひとつ屋根の下』(1993、フジテレビ系)など、数々のヒット作を世に送り出した脚本家、野島伸司は、問題作を数多く手がけたことでも知られている。特に『高校教師』(1993)、『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(1994)、『未成年』(1995)と続く「TBS野島伸司シリーズ」では、社会の暗部を鋭いタッチで表現し、大いに物議をかもした。
そんな「TBS野島伸司シリーズ」の最後を飾るのが、この『聖者の行進』だ。障がい者雇用をテーマとした本作は、平均20%という高視聴率を記録したものの、知的障がい者の描写や激しい暴力描写が世間の非難を呼んで苦情が殺到。スポンサーが相次いでCM放送を取りやめ、穴埋めとしてACジャパンのCMが放送されるなど、ドラマ史上前代未聞の事態を呼んだ。
さて、そんな本作、実はモデルとなった事件がある。それが、1995年に発覚した水戸事件(水戸アカス事件)だ。
茨城県水戸市にあるとある段ボール加工会社。ここでは、かねてより知的障がい者を積極的に雇用しており、社長のAは障がい者雇用に熱心な名士として地元で尊敬を集めていた。しかし、その後、Aは、国から交付される助成金を従業員にほとんど払っていなかったことが発覚し、翌年、詐欺容疑で逮捕されることになる。
その後、取り調べで発覚したのは、驚愕の実態だった。角材やバットを用いた殴打や、江戸時代の拷問「石抱(いしだき)」まがいのお仕置き、そして女性従業員への性的暴行―。こういったAの虐待による被害者は、実に10人近くに上ると言われている。
なお、本事件は、司法や行政の問題点が明るみになった事件でもあった。量刑が最も重いはずの知的障がい者への性的暴行が、正確な証言が確保できないために不起訴になったのだ。これにより、最終的にAには実刑ではなく執行猶予の判決が下されている。
なお、本作のタイトルである「聖者の行進」は、ジャズのスタンダードナンバーから引用したタイトルで、「聖者」とは知的障がい者たち自身を指している。しかし、障がい者を「聖者」扱いするという見方も、もはや一方的なステレオタイプだろう。多様性が叫ばれる現代、私たちは、正しく歩み寄る術を身につけなければならない。
(文・編集部)
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