「僕は物語のある顔が好きなんですよ」映画『死に損なった男』田中征爾監督が語る、俳優・水川かたまりの魅力と作品に込めた思い。単独インタビュー
text by 山田剛志
映画『メランコリック』(2019)の田中征爾監督の6年ぶりの新作『死に損なった男』が2月21日(金)より公開される。空気階段・水川かたまりが初主演を務める本作は、タイミング悪く死に損なった主人公・一平(水川かたまり)の前に男の幽霊(正名僕蔵)が現れるという筋書きを持つ、ユニークな映画となっている。田中監督に本作に込めた思いを伺った。(取材・文:山田剛志)
*本記事は物語のラストに触れる部分があります。鑑賞前の方はご注意ください。
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「もし僕が、次の電車に飛び込もうとしていたら」
着想のきっかけは13年前の出来事
―――容易にカテゴライズできないユニークな映画だと思いました。物語を着想されたきっかけと、どのような過程を経て脚本を書き上げられたのか伺えますでしょうか。
「きっかけは、13年ほど前。駅のホームで電車を待っていたところ、近くの駅で人身事故が起きまして。『運転を見合わせます』っていうアナウンスが流れてきた時に、『もし僕が、次の電車に飛び込もうとしていたら』という考えがふと降りてきたんです。仮に今、飛び降りようと考えていたとしたら、どうしていいかわからなくなるよな…と思って、その場でメモをとったのが最初ですね」
―――映画の冒頭で水川かたまりさん演じる一平が体験する出来事ですね。
「そうです。もちろん僕は飛び降りようと思っていたわけじゃないですけど」
―――頭の中でフィクションが動き出して、これだったら興味深いストーリーになるのではないかと思われたわけですね。
「はい。それからすぐに長編映画の脚本として完成させたものの、誰に読ませる訳でもなく、日の目を見ることはなかったんです。で、時を経て今回、プロデューサーの1人である宇田川寧さんから『一緒にオリジナルで映画を作りませんか?』と声をかけていただいて。5つくらい簡単なプロットをお渡しして、『この中で引っかかるやつありますか?』と伝えたところ『これが面白いですね』と言ってくださったのが、今回の企画でした。脚本は、昔書いたものを多少参照しつつ、ほとんど1からプロデューサーの皆さんと話し合いながら作っていきました」