声の専門家が選ぶ「現役最強のイケボ俳優」は? 決定版(3)日本が誇る“いい声”の持ち主…なぜ魅力的なのか?
男性は目で恋をし、女性は耳で恋をする―。英国の作家ウッドロー・ワイアットが遺した格言だ。この言葉の真偽はさておき、“いい声”が人の魅力を高めるのは確かなようだ。そこで今回は日本美声チューニング協会の三浦人美会長に「最高のイケボ俳優」の選出を依頼。そこから垣間見えたのは彼らの弛みない努力の跡だった。(取材・文:司馬宙)
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【日本美声チューニング協会三浦人美会長 プロフィール】
発声解剖学をベースにした声を出しやすい身体に整える美声チューニング®を提唱。20代はバンドのボーカルとして芸能事務所へ所属。年間300本のライブをこなし歌い続けた経験の中で発声・姿勢・呼吸等、身体のアプローチから声を変えていく手法を実践。バンド活動の終了後は、講師として稼働をスタート。人前で声を扱うことが多い企業代表や芸能事務所所属のアーティストレッスンまで延べ3,000 人以上の方を指導する。
阿部寛
―――続いては、いい声ランキング常連の感のある阿部寛さんです。
「阿部さんは、斎藤工さんと中村倫也さん、佐々木蔵之介さんと悩んだんですが、最終的に私自身の声の好みで選ばせていただきました(笑)。ただ、この4人はほぼ同列ですね」
―――阿部さんは、低音のイケボでおなじみですね。
「そうですね。ただ、阿部さんの声って、実はそこまで低くなくて、男性の声としては周波数がちょうど真ん中なんですよ。それでいて、帯域が広いんですね」
―――帯域とはなんでしょうか?
「声の周波数の幅のことで、いわゆる『声の幅』といわれるものです。
基本的に、人間の声って、風邪をひいてたら周波数が高くなったり、落ち込んでいると周波数が低くなったりといったように、体調や気持ちでブレがあるんです。でも、阿部さんの声はそれがない。
加えて、舌を出すとしっかり声の輪郭が出るし、トーンを上げた怒りの演技でも、キンキン響く部分もない。とても聞きやすい声なんです」
―――帯域の広さが役柄の広さに繋がったりするんでしょうか。
「おっしゃる通りで、俳優さんとしては広ければ広い方がいいです。ご存知のように阿部さんは、シリアスもコメディも得意とされている俳優さんですよね。彼の演技の幅は、声の帯域が一つ要因としてあると思います」
―――ちなみに、阿部さんのような声は、世間的にも好まれる印象があります。この辺はどのようにお考えですか。
「帯域が一定してるので、安心感があるんじゃないでしょうか。やはり、帯域にブレがあると、聞いているこちらもハラハラしてしまう。その点、阿部さんの声は、一貫してるので、落ち着いて聞くことができますね。要は『バラードのような声』というわけですね」
―――とても腑に落ちました(笑)。
「あと、一定の帯域の声は、アナウンサーにも求められますよね。おそらく、アナウンサーも、接着面積(上顎につく下の面積)をできるだけ均等にするよう意識しながらニュースを読んでいると思います」
―――確かに、アナウンサーの声がブレブレだと視聴者に不安を与えかねないですからね。ちなみに、帯域を一定するには、どういったトレーニングをすればよいのでしょうか。
「一番簡単なのはハミングですね。ハミングをした時に、小鼻がどれだけビリビリくるかをまず見る。そして、口を開けた時に、鼻の中で作った響きをできるだけ逃さないように練習すると、徐々に帯域が一定になります」
(取材・文:司馬宙)
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