乃木坂イチの個性派からカメレオン俳優へ…役者・伊藤万理華の唯一無二の魅力とは? 演技の凄さを徹底解説
text by 小松加奈
伊藤万理華主演の映画『チャチャ』。伊藤演じる主人公チャチャは、デザイン事務所に勤めるイラストレーターとして働き、人目を気にせず好きなように生きることをモットーにする女性。今回は、作品ごとに振れ幅の広いさまざまなキャラクターを演じながらも、どこか目が離せなくなる求心力を放つ伊藤万理華の魅力に迫ってみたい。(文・小松加奈)
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【著者プロフィール:小松加奈】
ライター/編集者。音楽・映画・ドラマ・アニメなどのエンタメ系を中心にインタビュー/レビュー/コラム記事などを手掛ける。フジロックは初年度から参加。プロ野球好き(横浜DeNAベイスターズ推し)。ジャンルを問わず、心を動かすもの/ことに夢中。
映画『サマーフィルムにのって』で真骨頂を発揮
芸術系の大学へと進学し、乃木坂46時代からグループの中でも異彩を放ちで人気を博していた伊藤万理華。グループ在籍時よりさまざまな作品に出演し、2017年にグループを卒業してからは女優業が本格化。映画、テレビ、舞台等、さまざまな作品でその存在感を放っている。
なかでも代表作となったのは、2020年に開催された第33回東京国際映画祭で特別招待作品として上映され、2021年8月に劇場公開となった主演作『サマーフィルムにのって』。
時代劇に夢中な女子高生・ハダシが、個性豊かな仲間たち、そして未来から来た凛太郎を巻き込み、映画作りに青春を懸ける(+ほのかな恋)姿を描いた群像劇だ。
主人公・ハダシは、勝新太郎をこよなく愛する時代劇ヲタクの映画部に所属する高校3年生。時代劇への愛、映画作りへの情熱がほとばしる姿を、まさに“体当たり”の演技で表現した伊藤。そのひたむきな姿に目を奪われてしまう。
そして、恋に無縁だったハダシが凛太郎への恋心を抱いていく繊細な感情表現も見事で、ハダシの心のざわつきが観る者の心も刺激した。作品の高評価もさることながら、本作で伊藤は第13回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。まさに、女優・伊藤万理華の真髄が見える作品と言えるだろう。