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森田想の人の神経を逆なでする演技が上手すぎる…全く他人事には思えないドラマ『3000万』の真髄とは? 第3話考察レビュー

text by 苫とり子

NHKが新しい制作手法を取り入れ誕生した土曜ドラマ『3000万』。本作は、NHKが新たに立ち上げた脚本開発に特化したチーム“WDRプロジェクト”によって制作され、主演は安達祐実、共演を青木崇高が務める。今回は、第3話の物語を振り返るレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

夫(青木崇高)の呑気さにイライラ…。

『3000万』第3話 ©NHK
『3000万』第3話 ©NHK

 ソラ(森田想)が奪ったお金の3分の1を受け取る代わりに、その逃亡を手伝う羽目になった祐子(安達祐実)。だが、追ってきた蒲池(加治将樹)を意図せず2人で殺してしまった。もう後戻りできない『3000万』(NHK総合)第3話。3人目の脚本家・山口智之が手がける今回のエピソードは、追い詰められた人間の滑稽さと効果的に使われた音楽が目立つ。

 冒頭、蒲池の車を草むらに隠した後、祐子がソラを乗せて車を走らせる場面の裏では義光(青木崇高)の自作ソングが流れていた。現実味のない1日を終えて疲れ切った祐子の顔と、病院のトイレに札をばら撒いただけで後は何もしていない義光の呑気な表情。状況は全く違えど、出産を終えたばかりでまだ呆然としている妻と、無邪気に子供の誕生を喜ぶ夫にも見えた。

 その後、祐子は脅されてソラを自室で匿うことになるが、そこでも妻と夫とで責任感の違いが見て取れる。事故の時にソラの顔を見ている純一(味元耀大)にバレないよう、慎重に同居生活を送る祐子。

 あまりに動きが不自然で思わず笑ってしまったが、本人は必死だ。どれだけソラに横暴な態度を取られても、無事にお金が自分のものになるまではと怒りを抑えて要望に応え、そのために仕事まで休んだ。

 一方、ソラの存在を知った義光は「俺、世話できないから」と早々に匙を投げる。のちに明らかになるが、義光は再び音楽に専念するため、この時すでに仕事を辞めていたのだ。だから時間なんていくらでもあるはずなのに、まるでソラがいないかのように普段通りの生活を送るばかりか、ソラのための食事を準備している祐子を尻目にリビングでギターをかき鳴らす。

 おそらく純一が生まれたばかりの頃もこうだったのだろう。2人が置かれている状況は非現実的だが、その振る舞いには妙なリアリティがある。祐子の義光に対する苛立ちに共感する視聴者も多いのではないか。そこが本作の真髄で、全くの他人事には思えない所以の一つになっている。

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