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役所広司と内野聖陽の演技合戦がスゴい…映画『八犬伝』評価&考察レビュー。観客の気持ちを代弁する葛飾北斎のセリフとは?

text by ばやし

江戸時代の名作『南総里見八犬伝』を現代的に再解釈した映画『八犬伝』が話題を呼んでいる。葛飾北斎や鶴屋南北との対話を通じて滝沢馬琴の葛藤をあぶり出す、虚実が巧みに織り交ぜられた力作である。今回は、本作の見どころに迫るレビューをお届けする。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:ばやし】

ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。

原作は山田風太郎の手によって再解釈された『南総里見八犬伝』

©2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.
©2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.

『南総里見八犬伝』と聞けば、誰もが歴史の教科書で一度は目にしたことがあるのではないだろうか。

 江戸時代の戯作家・滝沢馬琴が描く壮大なストーリーは、日本のファンタジー作品の原点とも言われており、後世にいたるまでその影響を感じさせる作品も多い。実際に、1983年には『里見八犬伝』として実写映像化もされており、千葉真一や真田広之など、当時の大スターたちが里見家に仕える八犬士を演じている。

 しかし、あらためて注目すべき点は、今回、実写映像化された『八犬伝』が 8つの珠を持つ剣士たちの力で敵を討ちとるファンタジー巨篇と、作者である滝沢馬琴が28年もの歳月をかけて作品を書き上げるまでの軌跡が、両軸で描かれているところだ。

 なぜ、このような突飛な構成がなされているかといえば、山田風太郎が1983年に描いた小説『八犬伝』を原作としているからに他ならない。山田風太郎による『八犬伝』では、山田の手によって再解釈された『南総里見八犬伝』のストーリーが描かれる「虚の世界」と、実際に馬琴が作品を書き上げるために苦悩する「実の世界」が、上下巻にわたって描かれている。

 小説では、架空の物語である『南総里見八犬伝』を入れ子構造のようにはめ込むことで、馬琴が全106冊にも及ぶ長編を書き上げるにいたった心境を、歳月の経過とともに描写することに成功していたのだ。

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