街から女性が消えた…社会現象を巻き起こした伝説の民放ドラマ(3)”不倫”を定着させた…主婦を虜にする魅力
人気ドラマが社会現象が起こし、”○○現象”と名付けられることがあるのは周知のことだろう。中には、当時の世情や時代背景をご存じない人からしてみれば、本当にそんなことが…?と疑うような事態が起きたことも。今回は、伝説の社会現象を引き起こした民放ドラマを5本セレクト。起きた現象についても詳しくご紹介する。(文・寺島武志)
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「金曜夜10時には、主婦は電話にも出ない」
”不倫”という言葉が世に定着するきっかけに
『金曜日の妻たちへ』
放送期間:1983年2月11日~5月13日
放送時間:金曜22:00~22:54
放送局:TBS系
脚本:鎌田敏夫
最高視聴率:20.9%
キャスト:古谷一行、小川知子、佳那晃子、泉谷しげる、石田えり、佐藤友美、竜雷太、いしだあゆみ、佐藤友美
【作品内容】
結婚8年目の中原宏(古谷一行)と久子(いしだあゆみ)夫妻。久子の短大の同級生である英子(小川知子)と村越隆正(竜雷太)夫妻。中原家が暮らす団地の上の階に暮らす田村東彦(泉谷しげる)と真弓(佐藤友美)夫妻。
3組の夫婦の付き合いは10年以上にわたる。中原夫妻が、念願かなって郊外のテラスハウスを購入して引っ越すと、時期を同じくして2組もニュータウンに越してきた。6人は毎週のように集まって過ご、仲の良い関係を築いていた。
しかし、村越が離婚を切り出したことにより、6人の関係は変わり始める…。
【注目ポイント】
時はバブル前夜、“1億総中流”といわれ、団塊の世代が東京郊外のニュータウンに家を持ち出した時代背景の中、今ではほどんど使われなくなった言葉でもある「核家族」がその交流の中で、既婚の男女が許されない恋に溺れていくというストーリーを描いた本作。
好評につきシリーズ化され、IからIIIまで制作された。しかしすべて続編というわけではなく、シリーズ毎に配役、設定が変更されている。
「金妻(キンツマ)」と略され、特に主婦層から絶大な支持を獲得し、「金曜夜10時には、主婦は電話にも出ない」と言われるほどのブームを呼んだ。舞台設定とされた東急田園都市線沿線の新興住宅街は“金妻タウン”と呼ばれるようになり、本作の影響で、その物件価格や地価にも影響を与えたともいわれ、その沿線のオシャレなイメージは現在でも生きている。
そして、本作が社会的に最もインパクトを残した例として挙げられるのは、現在では当たり前のように使われる「不倫」という言葉を広めたことだろう。それまでは「密通」「よろめき」などと呼ばれていた貞操に反する交際を、この言葉で統一させた。
脚本の鎌田敏夫は、それまでは『飛び出せ!青春』『俺たちの旅』などの青春ドラマを手掛けてきたが、本作の大ヒットにより、その後、数々のトレンディードラマや大人の恋を描いたドラマの脚本を、仕事の中心にしていくことになる。本作はバブル時代のテレビを彩ったトレンディードラマの走りという評価もある。
ストーリー以外の部分、特にそのオシャレな生活スタイルや登場人物のキャラクターに、視聴者の女性は未婚既婚問わず憧れを抱き、女性の社会進出をさらに後押しする原動力となったと同時に、古臭い貞操観念を破壊したという意味でも、社会に残した影響力は多大なものがあった。
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