ラストシーンが泣ける…。名曲「セプテンバー」が彩るダンスシーンの意味とは? 映画『ロボット・ドリームズ』解説レビュー
アメリカの作家、サラ・バロンのグラフィック・ノベルを原作に、パブロ・ベルヘルが監督を務めた映画『ロボット・ドリームズ』が公開中だ。本作は、犬とロボットの友情をセリフやナレーションなしで描いた無声アニメ作品だ。今回は、ダンスシーンや劇中歌に注目しながら本作の魅力に迫る。(文・シモ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:シモ(下嶋恵樹)】
東京都出身。横浜市在住。転職5回のサラリーマン生活を経て、フリーランスのライターに。地域情報サイトでの取材記事や映画サイトでの映画紹介記事、ビジネス系記事など、さまざまな執筆の経験あり。現在は、インタビュー記事などにも挑戦中。映画は幅広い国の映画を鑑賞。好きな映画は、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『イル・ポスティーノ』、『パリ・テキサス』。
無声アニメーションが描く感情豊かな物語
第96回アカデミー賞®長編アニメーション映画賞にノミネートされたことで話題となっている本作は、スペインの名匠パブロ・ベルヘル監督が、グラフィックノベル作家であるサラ・バロンの『Robotdreams』をもとに映画化した作品である。
このグラフィックノベルの特徴は、会話に頼らずイラストだけで物語を紡いでいる点だ。パブロ監督は、その独特な世界観を、台詞やナレーションを一切排した無声アニメーションとして見事に映像化した。彼は最も影響を受けた映画監督の一人にチャールズ・チャップリンの名を挙げ、本作のイメージに反映させたと語っており、非常に興味深い。
主人公ドッグの感情豊かな目の表情は、映画『放浪紳士 チャーリー』(1975)で見られるチャップリンの喜怒哀楽の表現を思い起こさせる。例えば、自宅にロボットが届いた時の輝きに満ちた瞳、ロボットがバンドマンに中指を立てる姿に驚く瞳、錆びついたロボットを海岸から救おうと奮闘しながらも諦めを見せた瞳など、一瞬一瞬が鮮やかに感情を語る。
さらに、『ロボット・ドリームズ』では、1980年代のニューヨークの町並みが忠実に再現されており、当時の流行がちりばめられている点も見所だ。インタビューによると、パブロ監督が10年間暮らしていたニューヨークへの思い出を本作に込めたという。
1980年代の文化について、予備知識を入れてから本作を鑑賞するのも楽しみの1つかもしれない。その当時を知る人には懐かしく、知らない人には新鮮に映るだろう。