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原作改変はあり? なし? 浜辺美波らの“表と裏の演技”の魅力とは? 映画『六人の嘘つきな大学生』考察&評価レビュー

text by ばやし

浅倉秋成の小説を原作とした映画『六人の嘘つきな大学生』が現在公開中だ。就活の最終面接を舞台に、6人の登場人物の裏の顔が暴かれていく“密室サスペンス”を、浜辺美波や赤楚衛二ら若手実力派俳優が熱演する話題作。今回は、原作との違いを解説しながら本作の魅力に迫る。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:ばやし】

ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。

“就活”をエンタメに昇華

六人の嘘つきな大学生
©2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会

 

 最初に原作小説を読んだとき、まさに実写映画向きな作品だと感じたことを思い出す。なぜなら、6人の男女が抱える嘘が巧みに暴かれていく青春ミステリ『六人の嘘つきな大学生たち』は、ともすれば重苦しく見られがちな“就活”を題材としながらも、ほかに類を見ないほどエンターテインメントに富んだ物語へと昇華しているからだ。

 誰もが憧れるベンチャー企業「スピラリンクス」の最終選考に残った6人の就活生。彼らは最後の課題であるグループディスカッションを通して団結力を深めたことで、全員で協力して内定を勝ち取ろうと切磋琢磨する関係になる。しかし、本番直前に通達されたのは「勝ち残るのは1人だけ。その1人は皆さんで決めてください」という非情な決定だった。

 宛名の入った封筒がきっかけとなって紛糾する議論と緊張感のある言葉の応酬。そして、二転三転する激論の行方は、やがて思いもよらない方向へと転がっていく。

 そんな予想だにしないストーリー展開に加えて、リアルと密接に関わる作品テーマを表現するには実写映画がベストだと言えるが、登場人物たちが大部分の時間を過ごすのはとある会議室の一室。

 映像作品においてほとんど画が変わらないのは痛いところ。そのためか、視点の切り替えや劇伴を駆使して密室で起こる6人の会話に起伏をつくり、視聴者を飽きさせない工夫が随所に凝らされていた。

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