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泣けてくるほど愛おしい時間

『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(2021)

木村多江【Getty Images】
木村多江【Getty Images】

原作:阿佐ヶ谷姉妹『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』
脚本:ふじきみつ彦
出演者:木村多江、安藤玉恵、いしのようこ、中川大輔、楠見薫、山脇辰哉、宇崎竜童、研ナオコなど

【作品内容】

「阿佐ヶ谷姉妹」というお笑い芸人として活動しながら、バイトで生計を立てている40代独身のエリコ(木村多江)とミホ(安藤玉恵)。血は繋がっていないが、二人は疑似姉妹として東京・阿佐ヶ谷にある六畳一間のアパートで暮らし始める。

【注目ポイント】

 ピンクのドレスがトレードマークのお笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹のエッセイをドラマ化した本作。ともに40代独身のふたりが本当の姉妹のように六畳一間のアパートでのほほんと暮らす姿と、ご近所さんとの付き合いを描いていく。
 
 特筆すべきはダブル主演を務める、エリコさん役の木村多江とミホさん役の安藤玉恵の再現度の高さだろう。ビジュアル面はもちろんのこと、ミホさんのマイペースで自由なところや、エリコさんの繊細で心配性なところなど、それぞれの特徴がしっかりと表現されていて、だんだん本人にしか見えなくなってくる。

 また脚本を手がけるのは、2025年後期に放送予定のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』のふじきみつ彦だ。同作は日本の怪談を世界に広めた明治初期の作家ラフカディオ・ハーン=小泉八雲の妻、小泉セツの人生をモデルにしたドラマで、ふじきは「何も起きない物語を書いています」とコメントしている。

 本作も特に劇的なことは何も起きない。ちょっとしたことでぶつかることはあっても、仰々しい喧嘩には発展せず、小競り合いで終わる。だけど、互いに干渉しすぎず、譲歩し合って楽しく平和な暮らしを持続させている二人を見ているだけで、なんだか涙が出そうなくらい愛おしい。忙しい日々に疲れた体と心に染み渡る作品だ。

 同時に、『ばけばけ』への期待も高まるというもの。

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