当代屈指の名優2人による緊張感みなぎる掛け合いが観たい
『キングダム』
監督:佐藤信介
原作:原泰久
脚本:黒岩勉、佐藤信介、原泰久
出演:山﨑賢人、吉沢亮、長澤まさみ、橋本環奈、本郷奏多、満島真之介、阿部進之介、深水元基、六平直政、髙嶋政宏、要潤、橋本じゅん、坂口拓、宇梶剛士、加藤雅也、石橋蓮司、大沢たかお
上映時間:134分
【作品内容】
中国の春秋戦国時代。西部の地「秦」在住の奴隷民である少年・信(山﨑賢人)は、幼馴染の漂(吉沢亮)と共に、武勲を上げて成り上がり、大将軍の座に就くことを目標としていた。
ある日、高官の昌文君(高島政広)は漂の武力に見惚れ、王宮に仕えることを申し出る。2人は別々の道から大将軍を目指そうと誓い合って別れる…。
【注目ポイント】
シリーズ最終章と銘打たれた『キングダム 大将軍の帰還』(2024)は、主人公・信(山﨑賢人)と尾到(三浦貴大)の友情と、尾到との死別が色濃く描かれ、涙腺を刺激するシーンが豊富にあった。さらに、趙国の武人・龐煖(吉川晃司)と秦六大将軍・王騎(大沢たかお)との因縁の一騎打ちは、まさにシリーズ史上最高とも言える盛り上がりをみせた。
さらに一展開あるのが本作の素晴らしいところ。趙三大天の若き軍師・李牧(小栗旬)率いる大軍が戦いの最中に突如現れ、秦軍を挟撃するのだ。結局王騎は、背後からの狙撃を受け、さらに龐煖に胸を貫かれて絶命する。そして、衝撃の場面を目の当たりにした王騎の配下であった信は絶句する…というクライマックスであった。
原作の読者であれば言わずもがなの事実だが、漫画『キングダム』は、2024年12月現在も連載中で74巻まで出ている。原作で王騎の死が描かれたのは16巻であり、まだまだ序盤に過ぎない。
原作通りの続編を想定すると、趙の宰相となった李牧の活躍がたっぷり描かれることになるだろう。
原作で李牧は、ついこの間まで敵とみなしていた秦の右丞相(うしょうじょう)である呂不韋(佐藤浩市)に、同盟を持ちかけ、他国への進軍を提案する。李牧の思惑では、先の戦いもこのために仕組んだわけであり、全て掌の内というわけだ。
しかし、呂不韋は、この申し出を、まず断る。
「え!?」といった表情で驚く信と家臣たち。
少し焦る李牧。
さらに呂不韋は、趙が保持する最大の城を秦に受け渡すのであれば同盟を組んでもいい、という条件を出す。
さらに、驚く信と家臣たち。
そして、李牧は複雑な表情でその条件をのみ、同盟成立と相成るわけだが、この2人の「頭脳戦」は、戦闘シーンとは一線を画すスリルがあり、超クールなのだ。
もっと言えば、鳴り物入りで飄々と登場してきた若き天才軍師・李牧を、それまで脇役であったおっさん軍師である呂不韋が、「調子に乗ってんじゃねーぞ、このコワッパが! と言わんばかりに、一枚上手のカードを切り出してねじ伏せる、痛快なエピソードなのだ。
小栗旬と佐藤浩市という当代屈指の名優2人による緊張感みなぎる掛け合い…想像しただけでもゾクゾクしてはこないだろうか。