黒澤明の凄さを徹底解説。ジョージ・ルーカス『スター・ウォーズ』の元ネタとなった傑作時代劇とは?【シネマの遺伝子】
text by 編集部
没後20年を経て、今なお世界の映画監督から敬愛され続ける黒澤明。2018年に行われた「イギリスBBCが選ぶ史上最高の外国語映画」では、1位に『七人の侍』が選出されている。そんな黒澤だが、とりわけ人気が高いのがアメリカ。スティーブン・スピルバーグやマーティン・スコセッシなど、名だたる名匠が黒澤を賞賛し、彼から多大な影響を受けたことを公言している。本稿では、中でも黒澤を師として仰ぐジョージ・ルーカスにスポットを当て、その影響関係を紐解いていく。
圧巻のダイナミズムとヒューマニズム~黒澤明作品の魅力
さて、ここで一度、黒澤明についておさらいしておこう。
黒澤は1910年生まれ。学生時代は画家を目指していたが、美術学校の受験に失敗。1936年に映画製作所に入社し、1943年の『姿三四郎』で監督デビュー。1950年には、『羅生門』を制作し、ヴェネツィア国際映画祭の最高賞である金獅子賞を受賞。日本映画の水準の高さを世界に知らしめるとともに、戦後復興のメルクマールにもなった。
その後も、『七人の侍』をはじめ、『生きる』『用心棒』など、歴史に残る名画を数多く制作。1960年代にはハリウッド進出にも挑戦している。1985年には、映画人では初となる文化勲章を、1990年にはアカデミー名誉賞を受賞。さらに、没後は、映画監督として初となる国民栄誉賞が授与された。
そんな黒澤作品の特徴は、第一にワンシーン・ワンカットによる「圧倒的なダイナミズム(力動)」だろう。彼は、徹底したリハーサルを重ね、役者の感情の発露を一気に撮り上げる。そのスピード感と迫力は、映画というメディアならではの“贅沢感”である。
また、彼の作品を貫く「ヒューマニズム」も忘れてはならない。例えば『生きる』では、不治の病を宣告された主人公が全力で生き抜く姿を骨太の映像で描出。“人間の生”という普遍的なテーマを表現している。
“運動”と“人間”ー。黒澤明の映画には、映画ならではのエッセンスが詰め込まれているのである。