実話をもとにしたクライムサスペンス
『モンスター』(2003)
監督:パティ・ジェンキンス
脚本:パティ・ジェンキンス
出演:シャーリーズ・セロン
【作品内容】
貧困家庭で幼少期から虐待を受けて育ったアイリーン(シャーリーズ・セロン)は、娼婦をしながら生計を立てていた。ある日、彼女はバーで若い女性セルビーと出会い恋に落ちる。娼婦から足を洗おうとするが…。
【注目ポイント】
本作は実在の女性連続殺人犯アイリーン・ウォーノスの生涯を描いた作品。女優のシャーリーズ・セロンは実在のアイリーンになりきるため、体重を10キロ以上も増やし眉毛を抜くなど、徹底した役づくりに励んだ。その甲斐もあり、第76回アカデミー賞では主演女優賞、第61回ゴールデングローブ賞では最優秀主演女優賞に輝いた。
貧困家庭で育ち、祖父からの性的な虐待によって妊娠までしたアイリーン。娼婦としてしか生計をたてる術を知らなかった彼女が偶然立ち寄ったバーでセルビー(クリスティーナ・リッチ)という女性と出会う。孤独だったアイリーンにとってセルビーは特別な存在になり、まともな仕事に就こうとするも上手くいかない。そんな彼女がホテル代を稼ぐために売春を行ったことから悲劇が幕を開ける。
客に襲われたアイリーンが、自己防衛のために相手を殺してしまったのだ。やがて、セルビーとの生活費のためにアイリーンは犯行を重ねるようになり、連続殺人犯へと身を落としていく。一方、アイリーンが罪を犯しているとは知らないセルビーは、彼女の売春行為を良く思っておらず、ワガママな一面をあらわにする。
複雑な家庭環境で育った2人の女が、素直に愛情を求めることが出来ずにすれ違う過程で、“モンスター”としての顔が見え隠れする。また、悲劇的と言うしかないアイリーンのキャラクターと彼女を追い詰めた社会の闇をかんがみると、彼女を単なる「悪人」として切って捨てることはできない。
映画『モンスター』は、主人公アイリーンの行動の背景にある過去の傷や苦悩を丁寧に描いている。果たしてアイリーンとセルビーどちらがモンスターだったのか…クライマックスの裁判シーンが強く印象に残る作品だ。