『世にも奇妙の物語』史上最も不気味な話は? 謎多き神回5選。恐いけどなぜか笑える…視聴者を引き込むエピソードをセレクト
1990年に放送がスタートした『世にも奇妙な物語』。喜怒哀楽のいずれにも分類できない斬新なストーリーや心をつかむ演出と演技で、長年にわたって老若男女問わず愛されてきた。そこで今回は、同番組の30年以上にわたる歴史の中から、恐いけどなぜか笑える意味深なエピソードをセレクト。物語の内容と見どころを解説する。(文・編集部)
——————————
『世にも奇妙な物語』とは
1990年4月からフジテレビ系列で放映されているオムニバスドラマ。タモリをストーリーテラーに迎え、毎週奇妙な世界に迷い込んだ人物のエピソードを紹介する。1992年までは通常のドラマとして3度シリーズ化されており、その後は毎年2回、「~の特別編」と銘打ってスペシャル枠で放送されている。
帰省したら実家が真っ暗?
木村拓哉主演の不条理コメディ
「BLACK ROOM」(2001/主演:木村拓哉)
放送日:2001年1月1日
演出:石井克人
脚本:石井克人
出演:木村拓哉、樹木希林、志賀廣太郎、我修院達也
【あらすじ】
3年ぶりに留学先のアメリカから帰省したナオキ(木村拓哉)。しかし、何やら実家の様子がおかしい。そもそも家が真っ暗で、玄関も宇宙船のハッチのように下から上に開けるタイプになっていたのだ。
父(志賀廣太郎)、母(樹木希林)と食卓を囲んだナオキは、3年の変わりようを2人に問い詰めるが…。
【注目ポイント】
自分以外の家族は全員宇宙人なのではないか。子どもの頃、こんな妄想を抱いたことはないだろうか。絶対的な絆で結ばれた家族だからこそ、何か裏があるのではないかと疑ってしまう―。そんな心理がこの妄想の裏で働いているのかもしれない。そういう意味でこの「BLACK ROOM」は、そんな家族に対する疑念を描いた作品と言えるだろう。
本話は、2001年1月1日に放送された『世にも奇妙な物語 SMAPの特別編』の一編。脚本、演出は『鮫肌男と桃尻女』(1999)の石井克人で、キャストには、木村拓哉のほか、樹木希林や志賀廣太郎、我修院達也らが名を連ねる。
本話は、主に前半の「会話パート」と後半の「SFパート」に大きく分かれている。
前半で描かれるのは、ナオキと両親との不可解な会話だ。家の変わりようを両親に問い詰めるナオキ。しかし、両親の返答は、あまりにも要領を得ない。
ナオキ「どうなってんの、オレんちは」
母 「オレんちじゃなくて名義上はお父さんと私の家なの」
ナオキ「わかってるよ」
父 「ワタクシ、予想以上に退職金が・・」
ナオキ「聞いたよそれ。なんでそう退職金がらみの話になるとワタクシって言うの?」
母 「いいじゃない、そういう人なんだから」
ナオキ「そういう人なの?」
母 「それより、大学の方はどうなの?」
ナオキ「『それより、大学の方はどうなの』じゃなくてさ。どうなっちゃってるのこの家は」
父 「ワタクシ、予想以上に…」
ナオキ「聞いたよそれ。もうしつこいなあ何度も何度も。ボケたんじゃないの」
このパートの注目ポイントは、なんといっても、母親役の樹木希林と父親役の志賀廣太郎だろう。シリアスからコメディまでなんでもござれの名女優、樹木と、劇団「青年団」出身で、晩年はコミカルな役を得意としていた志賀。2人が創り出すシュールな空気感は、さながら漫才か不条理演劇のようだ。
そして後半、隠された妹(我修院達也)が登場するや、物語はSFへと一気に舵を切る。このパートの注目ポイントは、ホームドラマとしては不釣り合いな高クオリティのCGだ。戦闘服に身を包んだ父の姿に、腹を抱えてしまうこと請け合いだろう。
なお、脚本と演出を担当した石井はCMディレクター出身で、フランスを中心に海外でも高く評価されている映画『茶の味』(2004)を手掛けた人物として知られている。気になった方はぜひチェックしてもらいたい。