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坂元裕二脚本ドラマで魅せた伝説のブチ切れシーン

尾野真千子
尾野真千子【Getty Images】

 13年前の『カーネーション』で演じた小原糸子は、ファッションデザイナー・コシノヒロコら三姉妹を育て上げ、自らも娘たちと同業であった母の物語。舞台は大阪府の『だんじり祭り』で有名な岸和田市の下町だ。

 糸子を表するとしたらとにかく威勢がよく、勝ち気。大正〜昭和初期にはめずらしい、商売人という名詞が似合う女性だ。「お客さんの流れを止めたらあかん」と言い、戦時中も関係なく思いついた洋服に関する商売方法をリリースしている。2011年の放送時、東日本大震災による影響で日本はひどく落ち込み、揺らいでいた。朝ドラの彼女の演技に救われた被災者も多くいただろう。

 朝ドラから2年後に出演した『最高の離婚』の濱崎結夏役。坂元裕二氏の脚本とあって、胸にドスドスと落とされる台詞も多く、話題作となった。このとき演じていた結夏も糸子と同じく、明るく、度胸の良い女性。結夏は繊細な夫と対照的な大雑把な性格でも、必死で偏屈者の夫を愛していた。

「分かっていた、分かっていたよ。あ、この人はひとりが好きなんだ。自分の自由を邪魔されたくないんだ。あ、そう。だったら、いつだろう? いつになったらこの人、家族を作る気になるんだろう? いつになったらこの人、家族を思いやれる人になるんだろう?って」

 離婚届を提出後、冷たい態度の夫に対して泣きながら、ブチ切れるシーンは覚えている人も多いはず。それだけ自分の感情を素直に吐露する人だった。そんな結夏のことを尾野本人もフジテレビのインタビューで「自分に似ている部分もあるだけに」と話している。

 そして現在放送中の『ライオンの隠れ家』。演じている橘愛生(たちばな・あおい)は夫から息子とともにDVを受けて、生きるために逃げる選択をした女性。役柄だけを読むと不幸そうに聞こえるけれど、愛生本人はすこぶる明るい人。

 この三役、どこまでも尾野真千子なのだ。3作を見ていても、既視感という言葉が生じないのはそのせいで、役柄が尾野に吸い付いている気がする。

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