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尾野真千子は弱腰になった私たちを触発する

尾野真千子
尾野真千子【Getty Images】

「なぜこの人変わらないんだろう?」

 毎夜、録画したドラマを見ながら浮かんだ疑問のアンサーが、「A-Studio+」(TBS系)のゲスト出演にあった。ふだん、ドラマを見てばかりでほぼバラエティ番組は見ないけれど、秋になってから毎日、尾野真千子の演技を見ていると、気になって仕方がない。

 そこには「やまびこで会話をしていた」というほど田舎町の出身で、家族が大好きだと話す尾野がいた。今は再婚をして沖縄と二拠点生活をしていると話す彼女もまた、めちゃくちゃうれしそうで、口調も雰囲気も笑顔も、まるで糸子と結夏と愛生とリンクする。言いたいことをきちんと自分の言葉で、はきはきと伝えている。その様子を親戚の姪っ子を見るように眺める私。そりゃ、今、毎日見ていますからね。

 ここで彼女とつながった知見がある。30代後半からエイジングというのもがちらつくようになり、危機感と背中合わせになった私はいろいろと調べるようになっていた。中でもとある大学教授の説が興味深かった。

「自分の意見をはっきりと言って、自分を大事にしている人間は老けにくい」

 失敗が許されない時代になり、人は不要な言及を避けるようになった。ともに発言に対する揚げ足取り合戦も年々加速。そんなご時世だからこそ、糸子と結夏と愛生と真千子のような女性には弱腰になった私たちは惹かれるのだと思う。それがアンサーだ。

 たまたま私は今回、出演していた3作だけを掬い上げたけれど、尾野は他に多くの役を演じている。他ではどんな顔を見せているのだろうか。年明けに配信予定の『阿修羅のごとく』(Netflix)はどんな役なのだろうか。そんなことを考えると、動画配信を漁る手が止まらず、(勝手に)尾野真千子クルーズは続くのである。

(文・小林久乃)

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