複数の作品で見せる忘れがたい毒親像
ここ数年、斎藤はドラマで“毒母”を演じる機会が非常に多い。
最初に思い出すのは2017年放送『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK総合)の早瀬顕子役は、一人娘の美月(波瑠)に対して異常なまでに固執する母親。当初は仲のいい親子だったはずなのに、顕子はただ子どもを束縛していただけだった。美月に恋人ができたときは、さあ大変。顕子のストーカーぶりは、日増しにヒートアップ。子どもの前ではひたすら笑顔なのに、その向こうには狂気を秘めていた。ヒューマンドラマだったはずが、途中からホラー映画にすり替わっていたような…。
2022年放送『恋なんて、本気でやってどうするの?』(関西テレビ、フジテレビ系)の長峰真弓役は、ギャンブル依存症で息子・柊磨(松村北斗/SixTONES)への執着心が強い母親。息子に女性が寄りつこうものなら、嘘や演技で阻止。そして「また飲んじゃった」と酒に溺れるという“毒母”のわかりやすい典型例でもあった。
2023年放送『いちばんすきな花』(フジテレビ系)の深雪沙夜子は、娘溺愛型の母親。三人の息子を産み、四人目に授かった待望の娘の夜々(今田美桜)。前出の早瀬顕子の威力がやや軽減された“毒母”だった。
そして2024年に演じている母親役も、珍しいタイプの“毒母”だと言えるかもしれない。『95』(テレビ東京系)も鈴木玲子はどこかゆがんでいたように思う。父は政治家、夫は医者という経済的に恵まれた環境にありながら、寂しい女性。息子には金以外、何も与えていなかった。承認欲求を満たすための出産ではなかったのかと推測する。
それから本年配信スタートとなった『さよならのつづき』(Netflix)。ほんのわずかなシーンだったけれど、息子を置いて、家を出て行った母親役を演じている。
先日、最終回を迎えた『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)の佐藤明美役には、ここまで並べてきた母親役のような陰湿めいた部分はなく、とにかく明るいスナックのママ。とはいえ、惚れた男ができると、娘も孫も客も放り出してしまう情動性は、母親というポジション云々ではなく、人としてどうなのだろうかと疑問に。