ホーム » 投稿 » コラム » 日本映画 » 「ヤバい母親」を演じさせたら日本イチ…なぜ斉藤由貴は “毒母”役のオファーが絶えないのか? 役者としての魅力を深掘り解説 » Page 3

一度は失った自信を、自分の努力で取り戻した女は強い

斉藤由貴
斉藤由貴【Getty Images】

 斉藤が出演するすべての作品を網羅しているわけではないけれど、ドラマを振り返っただけでも“毒母”の豊作。際立った役柄なので、つい目についてしまうというのも、今回のテーマ「なぜ斉藤は“毒母”役のオファーが絶えないのか」にも繋がる。彼女から仕事、家事育児をする一般的な母親像という役が見えてこない。

 では上記に並べた2017年から近年までの“毒母”役を総括するとしたら、怪演という言葉が似合う。ただこの言葉は使い方がすごく難しい。怪演は本当に演技が上手な役者でなければ成立しないし、役柄と役者の距離感が少しズレただけで安っぽい仕上がりになる。

 では斉藤由貴の演技がなぜ安っぽくならないのかといえば、圧倒的な美しさだと私は思う。実は彼女、トップアイドルから女優へと進み、三人の出産後に少しふっくらととしていた。本人も2017年の『AERAdot.』のインタビューでこう話している。

「1人産むごとにどんどん太っていったんです。それで5年ぐらい前にダイエットして、2カ月で10キロ落としました」

 このことを『はなまるマーケット』(TBS系)でも、超低カロリー生活で急激に痩せて、人には勧められないと話していたことを覚えている。

 女優業であれば求められる美しさとは、生まれついたものが99%。でもそれを担保していくのも難しい。彼女のように一度は失った自信を、自分の努力で取り戻した女は強い。しかも減量に成功後、次々にオファーが舞い込み、彼女の美貌を見込んだ制作スタッフは難しい“毒母”を依頼している。そして現在の母親役がある。

 なぜこんなに豪語するかといえば私も、おそらくこれを読んでいる女性にとってもダイエットとリバウンドは切っても切れない関係だからだ。美容体型と呼ばれるミソジニーめいた風潮を気にして、我慢を重ねて痩せる。あの努力がどれほど苦しく、恐ろしいか。ただ結果、私は体重が元に戻っているので、斉藤由貴がアラフォー、アラフィフ、そろそろアラカンと言われる世代になっても体型を維持しているのは、偉業だと称えたい。そこから生まれた美はただモノではないのだ。

 冒頭に書いた故・野際陽子はマザゴン役で一世風靡をした。斉藤由貴は新時代の母親役で、ますますの活躍を見せるのか。

(文・小林久乃)

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【了】

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